思考と読書【お金・健康・人間関係 編】

お金、健康、人間関係に関する本の書評と説明 ビジネス書や自己啓発が多くなると思います なるべく毎週投稿できるように頑張ります

★エビデンスに基づく株式投資(EBI)のすすめ を読んで

 

 

「株で1億儲けた」話は、コイン投げ大会の自慢話と同じ。本書は、そんな個人的経験やデイトレテクニカル分析を「見当違いの努力」と一刀両断します。プロの7割が市場平均に負ける現実を踏まえ、医学のように「エビデンス(科学的根拠)」に基づく株式投資(EBI)を提唱。「良い企業」の株が下がり、「ダメ企業」の株が上がるという衝撃のデータを突きつけます。PER、PCFR、業績修正など、本当に有効なファクターだけを使い、機械的に年20%のリターンを目指す。感情を排し、データに従う堅実な投資家必携のバイブルです。

 

エビデンスに基づく株式投資』要点
1. EBI(エビデンスに基づく株式投資)の基本姿勢
EBI(Evidence-based investment)とは: エビデンス(科学的根拠)をもとにした投資法であり、各種ファクター(投資指標)のエビデンスを知ることから始まる。
推奨する投資家: 株式投資を趣味や目的ではなく、資産形成のための「手段」と考えている大部分の個人投資家
目指すリターン: この方法(機械的銘柄選択法)で「ゆったりと年20%のリターン」を目指す。
デイトレテクニカル分析の否定: これらは「見当違いの努力」である。プロ投資家でさえ7割以上が市場平均以下の成績しか上げられない。
ファンダメンタル分析の限界: 「実りの少ない努力」である。
個人的経験の否定:
「1億円儲けた」といった株本は、個人的な成功体験に基づいているにすぎない。
それは「コイン投げ大会のチャンピオンがコイン投げの極意を語る」のと同じで、本質的に滑稽で危うい。
人間は個人的経験を重視しがちだが、長期的にはエビデンスが個人的経験に勝る。そのほとんどは「自信過剰バイアス」による思い込みである。
2. 成長神話の否定:「エクセレント・カンパニー」のワナ
利益成長の非相関性: 前期の利益成長率と今期の利益成長率は、まったくと言っていいほど相関がない。
投資家の誤解:
投資家は「前期増益率が高かった企業は今期もいいだろう」と誤って予想し、株価は過大評価(割高)される。
逆に「前期減益率が大きかった企業は今期もだめだろう」と悲観され、株価は過小評価(割安)される。
業績の「平均への回帰」:
「エクセレント・カンパニー」(過去の業績が良かった企業)も、「非エクセレント・カンパニー」(業績が悪かった企業)も、翌年以降の業績は急速に「平均」へ回帰する。
(例外:5年連続増益を続けた企業は、偶然の確率以上にその後も増収増益を続ける傾向がある)
エクセレント度の定義: ある研究では、(1)総資産成長率、自己資本成長率のランキング対数値、(2)平均PBRのランキング対数値、(3)平均総資産税引後利益率、平均自己資本税引後利益率、平均売上高税引後利益率のランキング対数値、の3項目の平均値を「エクセレント度」と定義している。
株価の逆転現象:
上記の「エクセレント度」が高い「エクセレント・カンパニー」は過大評価されているため、その後の株価は急落する。
「非エクセレント・カンパニー」は過小評価されているため、その後の株価は上昇する。
投資家は、業績がほんの少し平均へ回帰し始めただけで、あわててエクセレント株を売り、非エクセレント株を買い始める。
成長セクター投資のワナ:
成長セクターへの集中投資も期待外れに終わる。
理由①:次の成長セクターを同定することは極めて困難である。
理由②:仮に予測できても、成長セクターは必ずしも高い株価リターンを保障しない。株式発行が頻繁に行われるため、時価総額は増えても株価リターンは平均(S&P500)を下回ることがある(米国のハイテク・金融セクターなど)。
3. 唯一有効な「成長」ファクター:研究・開発費(R&D)
将来の利益成長との関連: 唯一、将来の利益成長と関連があるものは「研究・開発費(R&D)」である。
R&D比率と株価リターン:
研究・開発費の売上高に対する比率が大きい企業ほど、将来の利益成長が継続し、株価リターンも高くなる。
日本株では、最もR&D比率の高いグループは年率3.7%のリターン、最も低いグループは年率-1.1%のリターンとなり、比率が高いほど直線的にリターンが良くなる。
この傾向は1年後から10年後まで一貫して続く。
日米のR&D企業の特徴:
米国:R&D比率が高い企業ほど「規模が小さい」。
日本:R&D比率が高い企業ほど「規模が大きい」(大型株)。
共通点:日米ともに、R&D集約型の企業ほどPBRが高い。
超過リターンの理由(仮説): ① R&Dの企業価値評価は困難であり、会計上のルールによりミス・プライシングが起きやすい。 ② R&Dのリスクを反映したものである。
4. EBIの柱①:バリュー(割安性)ファクター
代表的なファクター: PER、PBR、PCFR、EV/EBITDA、配当利回りなど。
バリュー効果の優位性:
MSCIの調査では、これら4つのバリュー系ファクターはほとんどすべての国で有効である。
特に「日本株」はバリュー効果が最も高く、グロース株との差は10%近くに達する。これを使わない手はない。
日本では4分の3の期間でバリュー株はグロース株のリターンを上回っている。
予想値の重要性: 実績値よりも「今期予想」や「来期予想」を使ったファクターのほうが、有効性が格段に高い。
A) PER(株価収益率)
定義: PER = 株価 / 1株あたり純利益(EPS)。
種類:
実績PER: 前期の実績EPSを用いる。
今期予想PER: 今期予想EPSを用いる。
来期予想PER: 来期予想EPSを用いる。
フォワードPER: 今期予想EPSと来期予想EPSを、今期の残存期間に応じて期間按分ウエイトで加重して算出したフォワードEPSを用いる。予想値の修正や時間の経過で変動する。
有効性:
PERが低い(割安)ほどリターンは良くなる。PER最低位グループのリターンは、最高位グループより約20%も良い。
実績PERより、今期予想PER、来期予想PER、フォワードPERの方が有効性が高い。
安定性: 低PER効果は「大型株」で特に有効であり、安定的(リスクが低い)にリターンが稼げる。
リスク: 低PER銘柄のリスク(標準偏差、ダウンサイド・リスク)は、高PER銘柄より明らかに低い。
長期保有: 保有期間が長くなるほど(例:10年)、大型株・低PER銘柄のリターンが市場全体を上回る確率は高くなり(88%)、非常に安定的になる。1年目から5年目まで一貫してリターンが良いため、頻繁な銘柄入れ替えは不要。
業種: 業種内で相対的に低PERな銘柄もリターンが良い。
時間軸による新定義:
グロース投資(長期志向): 基準時点までの「平均PER」が高い銘柄を選ぶ。
バリュー投資(短期志向): 「直近のPER」が「平均PER」より低い銘柄を選ぶ。
B) PCFR(株価キャッシュフロー倍率)
定義: PCFR =株価 / 1株当たり営業キャッシュフロー
優位性: 利益(PER)は会計操作の影響を受けるが、キャッシュフローは受けにくいため、PCFRの方が実態を反映しやすい。「利益は意見、キャッシュフローは事実」。
営業CFの多様な計算方法:
簡易法(クオンツ系で多用): 営業CF = 純利益 + 減価償却
その他①: 営業CF = 実績税引後利益+実績減価償却費+(流動資産の変化-現金等価物の変化)-(流動負債の変化-債務の変化-所得税支払額の変化)
その他②: 営業CF = 純利益 + 減価償却費+配当- 役員賞与
予想値の計算: 予想CF = 予想税引後利益 + 前期減価償却費 など。
安定性: バリュー系ファクターの中で最も安定的。低PCFR銘柄はリターンが良い(平均値も中央値も高い)ため、銘柄選択が比較的簡単である。
リスク: 高PCFR銘柄はリスク(標準偏差、ダウンサイド・リスク)が極めて高く、選択すべきではない。
長期保有: 低PERと同様、一度選択すれば5年間は保有したままでよい。
景気との関係: 景気の山に近い局面(設備投資が多い時期)では、有効性がやや低下する傾向がある。
C) PBR(株価純資産倍率)
定義: PBR = 株価 / BPS(1株あたり純資産)。
純資産の注意点:
通常は「簿価純資産」(簿価の資産-負債)が使われるが、これには前払費用や繰延資産なども含まれる。
企業価値評価のためには時価ベースへの修正(例:未認識退職給付債務や偶発債務の反映)が必要となる。
減損会計: 収益性低下で投資回収が見込めない場合、帳簿価格を引き下げる処理。対象は有形固定資産(土地建物)、無形固定資産(のれん、特許権)、投資その他の資産など。
有効性: 低PBR効果も過去から現在まで多くの国で有効。
安定性: PERやPCFRに比べ、安定性にやや劣る。
低PBR銘柄の高い平均リターンは、少数の「大化け株」による所が大きく、リターンがマイナスの銘柄数の方が多い(中央値がマイナス)。
「当たれば大きい宝くじ」のようなもので、銘柄選択が難しい。
大型株・低PBR銘柄の方が、小型株・低PBR銘柄よりも「当たり外れ」の程度は小さい。
リスク: 高PBR銘柄はリターンが悪く、リスクが極めて高い。
PBRとファンダメンタル: 低PBR銘柄は過去のEPS成長率が低下しているが、銘柄選択時を境にEPSが上昇傾向に戻り、株価も反応する。
PBRとROE: 低PBR銘柄の中から選別するには、利益成長率ではなく「ROE」で選別すべき。
PBRとPERの組み合わせ:
PBRは単独では使いにくいが、他ファクター(特にPER)と組み合わせると安定性が向上する。
リターンは「低PER&低PBR」が最強。
PBRよりPERの方がリターンへの影響力が強い。
D) EV/EBITDA
背景: 企業買収時の「のれん」償却など、会計ルールによる影響を排除するため考案された。
定義:
EBITDA: 営業利益 + 減価償却費(簡易法)。(※厳密には金利、税金、減価償却費を引く前の利益)
EV(企業価値): 時価総額 + 有利子負債 - 現金・預金 + 一時保有有価証券。
有利子負債: 長短期借入金、社債転換社債など。
優位性: 国際比較が容易で(減価償却法や税率の違いを受けにくい)、PERやPCFRに勝るとも劣らない有益な指標。
景気との関係: 金融不安の時期(1997年)には財務安定性の観点から有効性が高まった。
E) その他のバリューファクター
PDR (株価配当倍率): PDR = 株価 / 1株あたり配当。
PSR (株価売上高比率): PSR = 株価 / 1株あたり売上高。米国では有効性が高いとされるが、日本株では有効性が低いというエビデンスが多い。
5. EBIの柱②:利益の質(アクルーアル)
定義: アクルーアル = 会計上の利益 - キャッシュフロー。「利益は意見、キャッシュフローは事実」。
計算式: アクルーアル=(流動資産の変化-現金同等物の変化)-(流動負債の変化-債務の変化-所得税支払額の変化)-減価償却費と割賦弁済
高アクルーアル(質の悪い利益):
会計上の利益は大きいが、キャッシュフローが伴っていない状態。(例:売掛金棚卸資産(在庫)が急増)。
粉飾決算の兆候である可能性もある。
アナリストは会計上の利益を重視しがちで、このミスプライシングが利益の源泉となる。
アクルーアルと株価リターン:
低アクルーアル(キャッシュフローが伴う利益)銘柄は、リターンが良い。
高アクルーアル(利益の質が悪い)銘柄は、リターンが悪い。
この効果は、PER、PBR、小型株効果とは独立したファクターである。
アクルーアルと将来の業績:
高アクルーアル企業は、その後「業績の下方修正」をされる場合が多い。
低アクルーアル企業は、その後「業績の上方修正」をされる場合が多い。
構成要素より総和: 売掛債権の増減、棚卸資産の増減などの各ファクターより、それらの総和であるアクルーアルの方が株価リターンとの相関が強い。
活用法: 低PER・低PBRなどのファクターと「低アクルーアル」を組み合わせることで、リターンは非常に向上する。
6. EBIの柱③:財務・収益性ファクター
A) 財務健全性(ディストレス・リスク)
ROD(経常利益 / 有利子負債): 財務ファクターの中で、株価リターンとの相関が最も強い。RODが高い(財務が良い)銘柄ほどリターンが良い。
O-score(倒産リスク):
倒産リスクを定量化するモデル。O-scoreが高いほど倒産確率が高い。
構成要素: 運転資本/総資産、有利子負債/総資産、予想純利益/総資産、ROD(予想経常利益/負債)など。
計算式例: O-score = -1.32 - 0.407log(総資産) + 6.03(負債合計/総資産) - 1.43(流動資産/総資産) + 0.076(流動負債/流動資産) - 1.72m - 2.37(純利益/総資産) - 1.83(営業CF/負債合計) + 0.285n - 0.521*1 (m, nは特定の条件で0か1)
PBRとリスクの誤解:
「低PBR銘柄は財務リスク(ディストレス・リスク)が高いからハイリスク・ハイリターンだ」という伝統的ファイナンスの説明は間違いである。
実際には「高PBR銘柄」のほうがディストレス・リスクが高い。
最悪の組み合わせ: 「高O-score(高リスク)& 高PBR(割高)」銘柄。
投資家が他の高PBR銘柄(成長株)と誤認してミスプライシングが起きている。
これらの銘柄は異常にリターンが悪いため、決して買ってはいけない
B) 収益性(ROE, ROA, ROIC, マージン)
ROE自己資本利益率):
定義: ROE = 純利益 / 株主資本。
理論: 企業が増資なしで達成できる利益・配当成長率(サステイナブル成長率)を表す。
有効性: 単独では、株価リターンとほとんど相関しない(米国株、日本株)。
理由: ①すでに株価に織り込まれている、②平均回帰する(高ROEは将来低下しやすい)、③負債比率を上げても上昇する(財務リスクを反映しない)。
ROA総資産利益率):
定義: ROA = 純利益 / 総資産。
有効性: レバレッジの影響を受けないため、ROEより使いやすい可能性がある。
ROIC(投下資本利益率):
定義: ROIC = 営業利益 * (1-税率) / (投下資本)。
投下資本の計算(方式):
ファイナンシング方式: 有利子負債 + 株主資本
オペレーティング方式: 正味運転資本 + 固定資産
有効性: 財務リスクや営業外の影響を控除するため、ROEより優れているとされ、著者も重視している。
マージン(売上高純利益率):
定義: マージン = 純利益 / 売上高。
有効性: ROEよりもマージンの方が、株価リターンとの相関が強く、安定的で使いやすい。
ROEの改善率:
ROEの「水準(高さ)」よりも、ROEの「改善率(変化)」の方が株価リターンとの関係が深い。
低PBR銘柄の中でも、「ROE改善率が高い銘柄」は特にリターンが高くなる。
7. EBIの柱④:アナリスト情報(業績修正)の正しい使い方
アナリスト予測の性質: アナリストの予測は総じて「楽観的」(実績が予想を下回る)である。特に利益が大きく変化する局面(赤字転落、黒字転換)では予測精度がきわめて悪くなる。
① アナリスト・レーティング(格付け):「売り」
アナリストのレーティング(「買い推奨」など)は、リターンの予測に役立たない。
東証1部では、むしろ「買い推奨」銘柄のリターンが悪く、「売り推奨」銘柄のリターンが良い(逆張り指標)。
「低PERだが、アナリストのレーティングも低い(オンボロ株)」銘柄は、投資家が避けるため株価がディスカウントされ、結果的に期待リターンが高くなる。
(例外:日本の新興市場では、高レーティング銘柄のリターンが良いという結果もある)
② 業績修正(モメンタム):「買い」
業績予想の「修正」は、株価インパクトが大きい。
上方修正: 発表後も株価は持続的に上昇する(特に店頭株で顕著)。
下方修正: 発表前から株価は下がっており、発表後はむしろ上昇に転ずること(リターン・リバーサル)が多い。
なぜ修正が続くのか(保守バイアス):
アナリストも投資家も新しい情報をすぐに受け入れられず、修正が過小になりがち。
その結果、「上方修正の後には、さらなる上方修正が続き」、「下方修正の後には、さらなる下方修正が続く」傾向がある。
「万年割安株」を避ける方法:
低PER(割安)銘柄が「上方修正」された場合、市場の期待が低かった分サプライズが大きく、リターンが非常に高くなる。
低PER銘柄が「下方修正」された場合、「織り込み済み」として株価が下がらず、むしろ「出尽くし」で上昇さえある。
高PER(割高)銘柄が「下方修正」された場合、サプライズが大きく株価は暴落する。
結論:「低PER(または低PBR)銘柄」に限定した上で「上方修正」情報を利用するのが最も効率的である。
タイミング:
コンセンサス予想が修正されてからでは遅い。
最初に業績修正を行う「大胆者」(First Mover)のアナリストに注目すべき。「追随者」の情報や、多くのアナリストの意見が一致した頃には、株価はピークを迎えている。
SUE (四半期業績サプライズ):
定義: SUE = (直近四半期のEPS - 4四半期前のEPS) / 過去8四半期の業績サプライズの標準偏差
有効性: 高SUE(ポジティブ・サプライズ)銘柄の買い、低SUE(ネガティブ・サプライズ)銘柄の売りは、6ヶ月〜1年間有効。
アナリスト予想の「ばらつき」:
定義: ばらつき(D) = 不確実性(V) + コンセンサスの欠如(1-C)
有効性:
ばらつきが大きい(不確実性やコンセンサス欠如が大きい)銘柄は、株価リターンが悪い。
コンセンサスが低い(アナリスト間の意見が一致していない)ほど、株価リターンが良い。
理由(仮説): ばらつきが大きい銘柄は、悲観的な投資家が空売りせず「何もしない」ため、株価にロングバイアスがかかり、期待の剥落とともに株価が低迷する。
8. その他の重要ファクター(小型株・モメンタム・複合指標)
A) 小型株効果
有効性: 時価総額の小さな小型株は、大型株よりリターンが良い。
バリュー vs 小型株: 小型株効果よりも、PERやPBRなどのバリュー効果の方がリターンへの影響力が大きい。小型株である「だけ」で銘柄を選択すべきではない。
小型株の特性:
「小型株・低PBR」銘柄は平均リターンこそ高いが、「当たり外れ」が極端で銘柄選択が非常に難しい(宝くじ的)。
「大型株・低PBR」銘柄の方が、当たり外れが少なく安定的。
小型株は市場が非効率的(情報への反応が遅い)ため、「上方修正された割安な小型株」は非常に魅力的である。
B) モメンタムとリターン・リバーサル
定義:
モメンタム: 過去の勝者(上昇銘柄)が勝ち続ける。
リターン・リバーサル: 過去の敗者(下落銘柄)が盛り返す。
市場による違い:
欧米株:短期(1年以下)はモメンタム、長期(1年以上)はリターン・リバーサル。
日本株東証1部):短期(1ヶ月)でも長期でもリターン・リバーサルが観測される。
(例外:日本の大型株や新興市場株ではモメンタムが観測されることもある)
結論: 普遍的なファクターではないため、これ(逆張り)だけで銘柄を選択すべきではない。
リバランス期間:
日本株の短期リターン・リバーサルを考慮すると、リバランス(銘柄入替)期間は短いほどリターンが良くなるが、回転率が上がりすぎ取引コストがかさむため現実的ではない。
総合フローバリュー:
定義: 利益バリュー、キャッシュフローバリュー、EBITDAバリュー、REVAバリューを等比で合成した指標。
REVA: EVAが簿価ベースの投下資本を使うのに対し、REVAは時価ベースの投下資本を用いて計算する。
C) PiotroskiのF_SCORE(低PBR銘柄の選別)
目的: 低PBR銘柄の中から、財務的に健全でリターンが期待できる銘柄を選別するスコア。
定義: 以下の9項目を0か1で得点化し、合計(9点満点)。
ROA (純利益/総資産) > 0 なら1点
ROA (ROAの改善度) > 0 なら1点
CFO (営業CF/総資産) > 0 なら1点
ACCRUAL (CFO > ROA) なら1点
⊿LEVER (長期負債比率の低下) > 0 なら1点
⊿LIQUID (流動比率の改善) > 0 なら1点
EQ_OFFER (過去1年の公募増資なし) なら1点
⊿MARGIN (売上高総利益率の改善) > 0 なら1点
⊿TURN (総資産回転率の改善) > 0 なら1点
有効性: F_SCOREが高い(8点や9点)低PBR銘柄は、リターンが大幅に改善する。特に中・小型株で極めて有効。
日本株版 (Noma): ⊿ROACFO、⊿MARGINの3項目だけでも、中・小型株で有効性が確認されている。
D) G_SCORE(高PBR銘柄の選別)
目的: 高PBR銘柄(成長株)から、真の成長株を選別するために考案されたスコア。
定義: 財務情報を含まず、収益性・変動性・保守性を重視。以下の8項目(業種中央値と比較)の合計。
ROA > 業種中央値 なら1点
CFROA (営業CF/総資産) > 業種中央値 なら1点
CFROA > ROA なら1点
VARROA (ROAの変動性) < 業種中央値 なら1点
VARSGR (売上高成長率の変動性) < 業種中央値 なら1点
RDINT (研究開発費/総資産) > 業種中央値 なら1点
CAPINT (設備投資/総資産) > 業種中央値 なら1点
ADINT (広告宣伝費/総資産) > 業種中央値 なら1点
有効性: PBRの高低に関わらずG_SCOREが高いほどリターンが良い。ただし、バリュー期間(市場全体が割安)では有効性が高くないため、むしろ「低PBR銘柄の絞り込み」に使う方が有効と思われる。
9. EBIの実践的ポートフォリオ戦略
4つの絶対条件: ①割安である(最重要)、②財務状態がよい、③収益性が高い、④業績予想の上方修正。
具体的スクリーニング基準(著者案の目安):
割安性:
PER < 12 (今期予想PERなどを用いる。景気により基準は変動させる)
PCFR < 8 (最も安定的なため重視。今期予想を用いる)
EV/EBIT < 8 (または EV/EBITDA < 6)
PBR: 単独では使いにくい(万年割安株リスク)ため、PERなどと組み合わせて使用。
財務性:
ROD > 0.3
有利子負債キャッシュフロー比率 < 4
収益性:
ROIC > 20% (ROEROAより重視)
営業利益売上高比 > 15%
マージン > 7% (ROEよりマージンを重視)
ROE > 12% (重視しないが、ROEの「改善」は重要)
モメンタム: 業績上方修正(特に「初期の」修正)があった。
除外: アナリストの格付けが「最高位で一致」している銘柄は避ける(東証1部)。
分散投資の必要性:
最低でも20銘柄以上に分散する。
<b>理由①(リスク低減)</b>:現代ポートフォリオ理論。
<b>理由②(大化け株の捕捉)</b>:割安株の高い平均リターンは「少数の大化け株」に依存しているため、銘柄数を増やさないと「大化け株」をポートフォリオに組み込む確率が下がり、リターンが平均値に近づかない(中央値に偏る)。
ベイズの定理の例: 5倍になる確率が0.3%の銘柄を75%の精度で抽出できる手法でも、抽出した銘柄が本当に5倍になる確率はわずか4.1%。よって銘柄数を増やす(分散する)必要がある。
売買の合理的判断:
非合理な売買: 「買値から-8%で損切り」「+20%で利益確定」という、自分の買値を基準にした売買は何の合理性もない。
合理的な売却時期:
株価が上昇し「割高」になったと判断した時。
明らかに下方修正が続くと判断した時(減収減益など)。
他に「さらに割安な銘柄」が現れた時。
株価が順調に伸び、ポートフォリオ内の比率が大きくなりすぎた時(リバランス)。
避けるべき行動:
マーケット・タイミング: 不可能。株価の大幅上昇は予測不可能なため、常にフル・インベストメント(市場に居続ける)が基本。
長期投資の誤解: 長期投資がリスクを減らすわけではない。「長期」も「短期」も、基本は「割安な銘柄」を買うことだけ。
得意分野への過信: 自分の専門分野(例:医者が製薬株)は、かえって主観や自信過剰バイアスに陥りやすいため注意。
「観察」のワナ: 店に行って「流行っているか」見るなどの調査は、個人的バイアスを強めるため有害無益。
コミュニティとの距離: 個人投資家の集団は「リスキー・シフト」などの集団バイアスにかかりやすい。話題の銘柄は避ける。
他者との競争: 他の投資家とパフォーマンスを競争しない。比較するならTOPIXなどのベンチマークにする。
マネー雑誌: 9割が有害無益。紹介されている「テーマ株」は無意味であり、むしろ避けるべき。
心構え:
「個々の銘柄」に自信を持つ必要はない。持つべきは「自分の投資方針(=EBI)」に対する自信である。
本業に専念し、サラリーという定期収入を強みとする。

 

 

*1:今期予想純利益-前期純利益)/(|今期予想純利益|+|前期純利益|

●出来高・価格分析の完全ガイド を読んで

 

 

市場は「大口投資家」に操作されている――。この衝撃的な前提から始まる本書は、価格チャートの裏に隠されたインサイダー(専門家)の動向を「出来高」から読み解く「VPA(出来高・価格分析)」の完全ガイドです。なぜ価格が動いたのか、その動きは本物か、それともワナか。VPAの「努力と結果の法則」を学ぶことで、彼らの「買い集め」や「売り抜け」の痕跡を追跡できます。トレードはアートであり、本書はその解像度を劇的に上げる「筆」となるでしょう。本気で市場を理解したいトレーダー必読の書です。

VPA(出来高・価格分析)の要点まとめ

VPAの基本原則と市場の性質

  • 市場操作の前提: 市場は「大口投資家」(インサイダー、スペシャリスト、マーケットメーカー)によって操作されている。彼らは一般大衆の「恐怖」と「貪欲」という感情を巧みに利用する。

  • 歴史は繰り返す: 投機は古くから存在し、今の市場で起こることは過去にも未来にも起こる。

  • VPAとは: Volume Price Analysis(出来高・価格分析)の略。値動きを判断する上で、価格と出来高は主要な要素である。

  • 価格と出来高の関係: プライスアクション(価格)には全ての情報が内包されているが、出来高がなければその価格分析を裏付けるものがない。出来高を伴う価格の動きは「本物の動き」であり、トレンドの始まりを示唆する。

  • フラクタル構造: VPAの原則は、30分のスイング予測でも数週間のトレンド予測でも同じように機能する。1滴の水(短期足)も大海(長期足)も同じ要素でできている。

  • トレードの本質: トレードは科学ではなくアートである。近道はなく、継続的な学習と努力がテクニックを上達させる。

市場操作のサイクル:「買い集め」と「売り抜け」

インサイダー(スペシャリスト)は「卸売価格で仕入れ、小売価格で売る商人」である。

1. アキュミュレーション(買い集め)

  • インサイダーが株を買い集める(卸売価格で仕入れる)段階。

  • 彼らはメディアを使い、「悪いニュース」を流して一般大衆を怖がらせ、価格を下落させて「ふるい落とし」、大衆に株を売らせる。

  • 「ダマシの下落」を数回発生させ、最後まで持ち続けた保有者をもあきらめさせる。

  • この買い集めは、数日、数週間、場合によっては数カ月かかる。

2. ディストリビューション(売り抜け)

  • インサイダーが買い集めた在庫を売る(小売価格で売る)段階。

  • 彼らはメディアを使い、「良いニュース」を流して一般大衆の関心を引きつけ、価格を劇的に上昇させ、高値で大衆に売りつける。

  • 一般大衆が「悲観的」なときに買い、「楽観的」になったら売るのが鉄則である。

3. 試し(Testing)

  • アキュミュレーション(買い集め)が終わった後、インサイダーは価格を吊り上げる前に「試し」を行う。

  • 供給の試し: 価格を一時的に下落させ、反応を見る。

    • 成功: 出来高が少なければ、売り圧力がすべて吸収された(売り手がいなくなった)ことを意味し、価格上昇の準備が整う。

    • 失敗: 出来高が多ければ、まだ売り手が残っていることを意味し、再度ふるい落とし(アキュミュレーション)を行う必要がある。

  • 需要の試し: ディストリビューション(売り抜け)が終わった後、価格を一時的に上昇させ、反応を見る。

    • 成功: 出来高が少なければ、買い需要がすべて吸収された(買い手がいない)ことを意味し、価格急落の準備が整う。

4. クライマックス(Climax)

  • 売りのクライマックス (Selling Climax): ディストリビューションの終わりに発生。大衆がパニック売りをし、インサイダーがそれを吸収する。

  • 買いのクライマックス (Buying Climax): アキュミュレーションの後の上昇トレンドの天井で発生。大衆が熱狂して買い、インサイダーがそれを売り抜ける。

  • ストッピングボリューム (Stopping Volume): 急落後、インサイダーが大量の買いを入れて下落を止めること。極端に多い出来高を伴うが、価格は下がらない(実体が小さい)。トレンド反転(上昇)の強力なシグナル。

  • トッピングアウトボリューム (Topping Out Volume): 上昇トレンドの天井で発生する逆の現象。反転(下落)のシグナル。

VPAの核:「努力と結果の法則」

ワイコフの第三法則:「結果(値動き)は努力(出来高)の量と一致しなければならない」。価格が妥当か「例外」かを見極める。

妥当な値動き(トレンド継続)

  • 上昇トレンド: 価格上昇 + 出来高増加 = 本物の上昇。インサイダーが参加している。

  • 下降トレンド: 価格下落 + 出来高増加 = 本物の下落。

  • ローソク足での確認: 実体が大きくヒゲのないローソク足(長大線)が、多い出来高を伴う場合、その方向への強いセンチメントが裏付けられる。

例外的な値動き(ワナまたは反転シグナル)

  • 例外1: 高い努力 + 小さな結果

    • 現象: 出来高が非常に多いのに、値動きが小さい(実体が小さいローソク足)。

    • 解釈: 市場が弱まっている明確なサイン。上昇トレンド中なら、買い手の努力がインサイダーの大量の売りによって吸収されている。市場は「買われ過ぎ」状態にある。

  • 例外2: 小さな努力 + 大きな結果

    • 現象: 出来高が少ない(または平均以下)のに、値動きが大きい(長大線)。

    • 解釈: ワナを示す警告。インサイダーが市場センチメントを「探っている」か、ダマシの動きである。

  • 例外3: トレンドと出来高の不一致

    • 上昇中の出来高減少: 市場は上昇しているが出来高が減少している。これは弱さの典型的なサインであり、上昇は長く続かない。

    • 下落中の出来高減少: 市場は下落しているが出来高が減少している。これは強さのサイン(売り圧力が枯渇している)であり、下落は続かない。

VPAとローソク足分析

ローソク足の形状(ヒゲや実体)と、それが示す出来高の関係性を分析する。

  • 流れ星 (Shooting Star): 上ヒゲが長く実体が小さい足。

    • 意味: 市場の弱さを示す明確なシグナル。

    • VPA: 出来高を伴う(平均以上〜多い)場合にのみ重要。出来高が平均以下なら単なる小休止。出来高の多い流れ星が連続すれば、弱気センチメントが増大している。

  • ハンマー (Hammer): 下ヒゲが長く実体が小さい足。

    • 意味: 市場の強さを示す。「市場が底を打つ」の意。インサイダーによる「強制された買い」を示す。

    • VPA: 極端に多い出来高を伴うハンマーは、買いのクライマックスの一環であり、反転の可能性が高い。

  • 首吊り線 (Hanging Man): 上昇トレンドの天井で出現するハンマー。

    • 意味: 市場の弱さを示す早期のサイン。

    • VPA: この後に出来高の多い「流れ星」が出現すると、弱気のシグナルとして強力に裏付けられる。

  • 足長同時線 (Long-Legged Doji): 始値終値がほぼ同じで、上下に長いヒゲを持つ。

    • 意味: 市場の「優柔不断性」を示す。トレンドの後に現れると反転のサイン。

    • VPA (例外): 出来高が「少ない」足長同時線は例外であり、ワナである。これはインサイダーによる「ストップハンティング」(損切り狩り)を示し、特に経済指標(米雇用統計など)の発表時によく見られる。

    • VPA (妥当): 正当化されるのは、最低でも平均以上、できれば多い出来高を伴うときである。

  • 短小線 (Small-Body Candle): 弱い市場センチメントを示す。出来高が「多い」のに短小線(例外)の場合、市場は小休止か反転の準備をしている。

支持線抵抗線と保ち合い

  • 保ち合い (Consolidation): 市場の約70%は横ばい(保ち合い)である。これはアキュミュレーションやディストリビューションの期間に発生する。

  • 原因と結果の法則: 保ち合いの期間が「長い」(原因)ほど、そこからブレイクアウトした後の値動き(結果)は大きくなる。

  • 領域の特定: 「ピボットハイ」(孤立した高値)と「ピボットロー」(孤立した安値)を使って、保ち合い領域の天井(抵抗線)と床(支持線)を特定する。

  • ブレイクアウトの確認:

    1. 終値が天井(床)を「はっきりと目に見える」ギャップを空けて上回る(下回る)必要がある。

    2. ブレイクアウトは「平均を大きく上回る出来高」によって裏付けられなければならない。

    3. 出来高の少ないブレイクアウトはダマシ(ワナ)の可能性が高い。

  • 役割転換: ブレイクされた抵抗線支持線に変わり、ブレイクされた支持線抵抗線に変わる。

トレードの実践と応用

  • 忍耐の重要性: シグナル(例:流れ星)が現れても、市場はすぐには反転しない。インサイダーが買いや売りを「吸収」するには時間がかかる。

  • 複数の時間枠 (Multi-Timeframe Analysis): VPAは複数の時間枠で使うとパワーを増す。

    • 3つの時間枠(例:5分足、15分足、30分足)を推奨。

    • 長期足(30分足): 「支配的なトレンド」を把握する。

    • 中期足(15分足): トレードの仕掛け(エントリー)に使う。

    • 短期足(5分足): 市場を細かく見る。

    • トレンドの変化は短期足から長期足へと伝播する。

    • 支配的トレンドに逆らったトレードはリスクが高く、短期間にすべき。

  • FX市場での出来高:

    • FX市場では「ティックボリューム」を出来高の代理として使う。

    • これは市場の実際の動きの約90%を表すとされる。

    • VPAは「相対的」な出来高(前の足との比較)を見るため、データが不完全でも問題ない。同じデータフィード内で比較すればよい。MT4の無料ティックボリュームで十分である。

  • ポジション管理: 仕掛けるのは簡単だが、手仕舞うのは非常に難しい。VPAは、トレンドが本物か(出来高が減少する押し目かなど)を判断し、ポジションを自信を持って保持するのを助ける。

高度なVPAツール

★ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 を読んで

 

 

【書評】ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣|人生を変えるアトミック・ハビッツの法則

 

「今年こそは英語の勉強を!」「毎日筋トレを続けよう!」

そう誓ったはずなのに、いつの間にか三日坊主…そんな経験はありませんか?高い目標を掲げても、続けることの難しさに挫折してしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、科学的かつ実践的な解決策を示してくれるのが、ジェームズ・クリアー氏の世界的ベストセラー『複利で伸びる1つの習慣』です。

本書の核心は**「アトミック・ハビッツ(原子のような小さな習慣)」**という考え方。毎日たった1%の改善は、それ自体は取るに足らない変化に見えるかもしれません。しかし、その小さな努力が「複利」で積み重なることで、1年後には37倍もの大きな成長につながると著者は説きます。

本書は単なる精神論ではありません。「意志力に頼るな、環境を設計しろ」というメッセージのもと、**「きっかけ、欲求、反応、報酬」という習慣の4つのステップを科学的に分析。そして、良い習慣を身につけるための「行動変化の4つの法則」**を提示します。この法則が非常に強力で、「なぜ今まで続かなかったのか」が腑に落ちると同時に、「これなら自分にもできる」という確信を与えてくれます。

何かを成し遂げたいのに一歩が踏み出せない人、何度も挫折を繰り返してきた人にこそ読んでほしい一冊。人生を劇的に変えるのは、大きな一発逆転ではなく、日々の小さな正しい選択の積み重ねなのだと、本書は力強く教えてくれます。


 

📖『複利で伸びる1つの習慣』まとめ

 

以下に、書籍の重要なポイントを章ごとに箇条書きでまとめました。あなたの人生を変える「仕組み」作りのヒントがここにあります。

 

はじめに

 

  • 小さなことから始める戦略: 著者が上達できた唯一の方法は、小さなことから始めることだった。この戦略は自身のビジネスや本書の執筆にも活かされている。

  • 本と著者の関係: 「すばらしい本を書くには、まず自分がその本どおりにならなければならない」という投資家ナバル・ラビカントの言葉を引用。

  • 本書の根幹: 習慣を「きっかけ、欲求、反応、報酬」の4ステップで捉え、そこから生まれる「行動変化の4つの法則」を提案。これは認知科学と行動科学を統合した新しい人間行動モデルである。

 

基本:なぜ小さな変化が大きな違いをもたらすのか

 

 

第1章 アトミック・ハビッツ 最小習慣の驚くべき力

 

  • 1%の改善の力: 毎日1%改善すれば、1年後には37倍良くなる。逆に毎日1%悪くなれば、ゼロに近づく。習慣は自己改善における「複利」のようなもの。

  • 軌道の重要性: 今成功しているか否かより、現在の習慣が成功への軌道に乗っているかどうかが重要。結果は習慣の「遅行指数」にすぎない(例:体重は食習慣の結果)。

  • 潜在能力のプラトー: 努力しても成果が見えない期間は「潜在能力のプラトー」と呼ばれる。努力は無駄になっておらず、蓄積されている。変化は摂氏0度で氷が溶けるように、ある一点を超えると劇的に現れる。

  • 目標より「仕組み」に集中する:

    • 問題点1:勝者も敗者も目標は同じ: 目標だけでは成功は決まらない。勝敗を分けるのは、継続的な改善の「仕組み」である。

    • 問題点2:目標達成は一時的な変化: 結果(汚い部屋)ではなく、原因(片付けない習慣)となる「仕組み」を変えなければ、問題は再発する。

    • 問題点3:目標は幸福を制限する: 「目標を達成するまで幸せになれない」という考え方を生む。仕組み(プロセス)を大切にすれば、いつでも満足感を得られる。

    • 問題点4:目標は長期的な進歩と相容れない: 目標達成後に燃え尽きやすい。ゲームに「勝ち続ける」ための仕組み作りが重要。

  • 結論: 良い結果を得たいなら、目標設定は忘れ、代わりに「仕組み」に集中すること。

 

第2章 習慣がアイデンティティーを形成する(逆もまた真なり)

 

  • 変化の三つの層:

    1. 結果の変化: 体重を減らす、本を出版するなど。

    2. プロセスの変化: ジムに通う、机を片付けるなど。

    3. アイデンティティーの変化: 世界観、セルフイメージ、信念の変化。

  • アイデンティティーベースの習慣: 多くの人は「結果」から変えようとするが、長続きしない。重要なのは「どのような人間になりたいか(アイデンティティー)」から始めること。

  • 行動とアイデンティティーの関係:

    • 行動はアイデンティティーの反映である。「自分は〇〇な人間だ」という信念に沿った行動を無意識に取る。

    • 逆に、習慣はアイデンティティーを形成する道でもある。行動を変えることが、自分自身を変えるもっとも効果的な方法。

    • 一つ一つの行動は「なりたい自分」への一票となる。票が集まることで、新しいアイデンティティーの証拠が蓄積される。

  • シンプルな二段階プロセス:

    1. どのようなタイプの人になりたいかを決める。

    2. 小さな勝利で、自分自身にそのことを証明する。

  • 習慣の本当の重要性: 良い結果を得るためだけでなく、自分についての信念を変えるために習慣は重要である。文字通り、あなたはあなたの「習慣」になる。

 

第3章 シンプルな四つのステップで良い習慣を身につける

 

  • 習慣形成のプロセス: 試行錯誤から始まり、脳が「満足できる結果」につながる行動を学習し、自動化していくプロセス。

  • 習慣ループの4ステップ:

    1. きっかけ (Problem Phase): 報酬の存在を示唆するサイン。脳に行動を開始させる。

    2. 欲求 (Problem Phase): 習慣の原動力。求めているのは状態の変化。

    3. 反応 (Solution Phase): 実際に行う習慣(思考や行動)。

    4. 報酬 (Solution Phase): 習慣の最終目標。欲求を満たし、脳に「この行動は記憶する価値がある」と教える。

  • 行動変化の4つの法則: この4ステップをハックするための法則。

    1. (きっかけ) → 第1の法則:はっきりさせる (Make it obvious)

    2. (欲求) → 第2の法則:魅力的にする (Make it attractive)

    3. (反応) → 第3の法則:易しくする (Make it easy)

    4. (報酬) → 第4の法則:満足できるものにする (Make it satisfying)


 

第一の法則:はっきりさせる

 

 

第4章 人は正しく見ていない

 

  • 無意識の習慣: 多くの習慣は無意識に行われており、それが変化を妨げる。まずは自分の習慣を「意識化」することが第一歩。

  • 指差喚呼: 日本の鉄道員が実践する安全確認。無意識の習慣を意識的なレベルに引き上げることで、ミスを85%減少させる。

  • 習慣得点表: 自分の毎日の習慣をリストアップし、それが「良い習慣(+)」「悪い習慣(-)」「どちらでもない(=)」かを評価する。自分の行動を客観的に把握するのに役立つ。

  • 悪い習慣の意識化: 悪い習慣を止めたいなら、その行動と結果を声に出して言ってみる。「これを食べようとしているが、必要ない。食べると体重が増え、健康を損なう」と言うことで、行動の重みが増し、無意識に陥るのを防ぐ。

 

第5章 新しい習慣を始める最善の方法

 

  • 実行意図: 「いつ」「どこで」行動するかを明確に計画する。「私は〈いつ〉〈どこで〉〈何を〉する」という形式で計画を立てることで、実行率が大幅に向上する。モチベーション不足は、実は「明確さ」の不足であることが多い。

  • 習慣の積み上げ (Habit Stacking): 新しい習慣を、既存の習慣の直後に「積み上げる」方法。「〈現在の習慣〉をしたら、〈新しい習慣〉をする」という公式で計画する。

    • 例:「毎朝コーヒーを淹れたら、1分間瞑想する」「仕事用の靴を脱いだら、すぐに運動着に着替える」

  • きっかけの選び方: 習慣の積み上げを成功させるには、毎日確実に行う習慣を「きっかけ」として選ぶことが重要。

 

第6章 モチベーションを過大評価せず、環境を重視する

 

  • 環境の力: 人間の行動は、個人の特性(P)だけでなく、環境(E)にも大きく左右される (B=f(P,E))。私たちは、ものが「そこにあるから」という理由で選ぶことが多い。

  • 視覚的きっかけの重要性: 人間の感覚受容体の多くは視覚に使われている。目に見えるきっかけは、行動を促すもっとも強力な要因となる。

  • 環境設計:

    • 良い習慣のきっかけを、環境の中に「はっきりと見える」ように配置する。(例:ギターを練習したいなら、リビングの真ん中にスタンドを置く)

    • 悪い習慣のきっかけを、環境から取り除く。

  • 背景(コンテクスト)の力: 習慣は特定のきっかけだけでなく、その行動を取り巻く「背景全体」と結びつく。新しい環境では、古い習慣のきっかけから逃れられるため、新しい習慣を始めやすい。

  • 一つの場所に一つの目的: 「仕事をする空間」「リラックスする空間」のように、場所と目的を分けることで、習慣の混在を防ぎ、集中しやすくなる。

 

第7章 自制心を保つコツ

 

  • 自制心のある人の秘密: 彼らは意志力が強いのではなく、誘惑的な状況に身を置かないように「生活を設計する」のが上手い。

  • きっかけが誘発する欲求: 悪い習慣のきっかけに触れると、強烈な欲求が引き起こされる。一度脳に刻まれた習慣の溝は完全には消せない。

  • 第一の法則の逆:見えないようにする (Make it invisible):

    • 悪い習慣をやめるもっとも実践的な方法は、それを引き起こす「きっかけ」を環境から取り除くこと。

    • 例:集中したいならスマートフォンを別の部屋に置く。お菓子を食べ過ぎるなら、家に置かない。

  • 自制心は短期戦略: 意志力に頼って誘惑に勝ち続けることは不可能。自制心を使わなくて済むように、規律正しい環境を整えることにエネルギーを使うべき。


 

第二の法則:魅力的にする

 

 

第8章 習慣を魅力的にする方法

 

  • 超正常刺激: ジャンクフードやSNSなど、現代社会には人間の本能的な報酬系を過剰に刺激する「超正常刺激」が溢れている。

  • ドーパミン主導のフィードバックループ: ドーパミンは「喜び」を感じる時だけでなく、それを「予測」する時にも放出される。行動を駆り立てるのは、報酬の実現そのものよりも「報酬の予測」である。

  • 誘惑の抱き合わせ: 「したい行動」と「しなければならない行動」をセットにする戦略。

    • 例:お気に入りの番組は、エクササイズバイクをこいでいる時だけ見る。

  • 習慣の積み上げ+誘惑の抱き合わせ 公式:

    1. 〈現在の習慣〉をしたら、〈必要な習慣〉をする。

    2. 〈必要な習慣〉をしたら、〈したい習慣〉をする。

 

第9章 習慣作りにおける家族と友人の役割

 

  • 文化と所属欲求: 人間には「集団に属したい」という深い願望があり、所属する文化圏で「普通」とされる行動を魅力的に感じる。

  • まねる3つのグループ:

    1. 近しい人(家族、友人): 親しい人の習慣を無意識にまねる。望ましい行動が普通の文化(コミュニティ)に参加するのが最も効果的。

    2. 多数の人(集団): 集団の行動に同調する傾向がある。一人で正しくいるより、皆と一緒に間違う方を選ぶことが多い。

    3. 力のある人(地位や名声): 尊敬や賞賛を得ている人の行動をまねる。

  • 戦略: 望ましい行動が当たり前で、かつ自分と共通点のある文化に加わること。共有のアイデンティティーが個人のアイデンティティーを強化する。

 

第10章 悪い習慣を見つけて直す方法

 

  • 潜在的動機: 私たちの習慣は、不安の解消、承認欲求、地位の獲得といった、より深くにある「潜在的動機」に対する現代的な解決策である。

  • 予測が感情を生む: 行動は、きっかけそのものではなく、そのきっかけをどう「解釈・予測」するかによって決まる。予測が感情(欲求)を生み、行動を導く。

  • 第二の法則の逆:つまらなくする (Make it unattractive):

    • 悪い習慣を避けることで得られるメリットを強調する。(例:「タバコを我慢すれば、お金が貯まり、健康になり、長生きできる」)

    • 考え方を変える: 「~しなければならない」を「~してもいい」に言い換える。(例:「健康的な食事を作らなければならない」→「体にエネルギーを補給し、パフォーマンスを高める食事を作ってもいい」)

  • モチベーションを高める儀式: 難しい習慣の直前に、自分が楽しいと感じる短い儀式を行うことで、ポジティブな感情と結びつけることができる。


 

第三の法則:易しくする

 

 

第11章 ゆっくり歩もう、でも後退してはいけない

 

  • 行動 vs 意向: 「意向」(計画、学習)は結果を生まない。「行動」(実行)だけが結果をもたらす。多くの人は失敗を恐れ、「意向」の段階で足踏みしてしまう。

  • 繰りかえしの重要性: 習慣形成は、行動を繰りかえすことで脳の神経回路が強化され、自動化されていくプロセス。かけた時間よりも「実行した回数」が重要。

  • まず始める: 完璧な計画を立てるより、まず繰りかえし始めることが肝心。最適化する前に、まず標準化する。

 

第12章 最少努力の法則

 

  • 人間の性質: 人間は、複数の選択肢がある場合、もっとも労力が少ないものを自然に選ぶ性質がある(最少努力の法則)。

  • 抵抗を減らす: 良い習慣を続けたいなら、それに伴う「抵抗(フリクション)」を可能な限り減らすこと。

    • 例:ジムに行きたいなら、家からジムまでの道のりにある障害を取り除く。運動着は前日に用意しておく。

  • 環境の準備: 未来の行動がしやすくなるように、あらかじめ環境を整えておく。良い習慣は生活の流れに溶け込ませる。

  • 第三の法則の逆:難しくする (Make it difficult):

    • 悪い習慣に伴う抵抗を増やすことで、その行動を取りにくくする。

    • 例:テレビを見過ぎるなら、見るたびにコンセントを抜き、電池を外して別の部屋に置く。

 

第13章 二分間ルールで先延ばしをやめる方法

 

  • 決定的な瞬間: 1日の行動の多くは、その直前の「決定的な瞬間」の選択によって決まる。この小さな選択が良い軌道か悪い軌道かを決定する。

  • 二分間ルール: 「新しい習慣を始めるときは、二分以内でできるものにする」

    • 「毎晩寝る前に読書する」→「1ページ読む」

    • 「ヨガをやる」→「ヨガマットを敷く」

    • 「5キロ走る」→「ランニングシューズを履く」

  • 入り口の習慣: 重要なのは、習慣を「始める」こと。最初の二分間を簡単にすることで、より大きな行動へのハードルが劇的に下がる。まず習慣を確立し、それから改善していく。

 

第14章 良い習慣を必然にし、悪い習慣を不可能にする方法

 

  • 背水の陣法: 未来の良い行動を確実にするために、現在において選択肢を制限する。(例:作家ヴィクトル・ユーゴーは執筆に集中するため、服をすべてタンスに鍵をかけて閉じさせた)

  • 一度だけの選択: 自動的に良い習慣を導く「一度だけの選択」は非常に強力。

    • 例:健康的な睡眠のために良いマットレスを買う。自動積立プランに申し込む。

  • テクノロジーの活用: テクノロジーは、以前は面倒だった行動を自動化し、良い習慣を必然にし、悪い習慣を不可能にするのに役立つ。

    • 例:ウェブサイトブロッカーでSNSへのアクセスを制限する。


 

第四の法則:満足できるものにする

 

 

第15章 行動変化の大原則

 

  • 時報酬を好む脳: 人間の脳は、遠い未来の大きな報酬(遅延報酬)よりも、今すぐ得られる小さな報酬(即時報酬)を好むように進化してきた。

  • 行動変化の大原則: 「すぐに報われる行動は繰りかえし、すぐに罰せられる行動は避ける」

  • 良い習慣と悪い習慣のジレンマ:

    • 良い習慣:コストは現在、報酬は未来。(例:運動は今つらいが、未来に健康を得る)

    • 悪い習慣:報酬は現在、コストは未来。(例:喫煙は今快感だが、未来に健康を損なう)

  • 戦略: 長期的に見返りのある良い習慣に、「即時的な楽しみ」を少し加える。

    • 例:外食を我慢したら、その分のお金を旅行用の口座に入れる。行動の終わりに、自分を褒める。

  • アイデンティティーとの一致: 報酬は、強化したいアイデンティティーと一致するものを選ぶことが重要。

 

第16章 良い習慣を毎日続ける方法

 

  • 習慣トラッカー: 習慣を実行したかどうかを記録する方法(例:カレンダーに×印をつける)。

    • メリット1(はっきりさせる): 行動を記録することで、自分の行動を意識できる。

    • メリット2(魅力的にする): 途切れさせたくないという気持ちが生まれ、進歩がモチベーションになる。

    • メリット3(満足できる): 記録すること自体が小さな達成感となり、即時報酬となる。

  • 二回はさぼらない: 完璧を目指す必要はない。一度失敗しても問題ないが、それが続くと新しい(悪い)習慣が始まってしまう。一日さぼったら、次の日には必ず軌道に戻ること。

  • 測定の罠(グッドハートの法則): 「測定が目標になると、それはもはや良い測定ではなくなる」。数字そのものではなく、その背後にある本来の目的を見失わないように注意する。

 

第17章 見張ってくれる人がいればすべてが変わる

 

  • 第四の法則の逆:満足できないものにする (Make it unsatisfying):

    • 悪い習慣のコストを未来から現在に前倒しする。

  • アカウンタビリティー・パートナー: 自分の目標や進捗を見張ってくれるパートナーの存在は、強力な動機付けになる。私たちは他者からの評価を気にするため、怠けることへの「社会的損失」が生まれる。

  • 習慣契約: 守るべき習慣と、守れなかった場合の罰則を明記した契約書を作成し、パートナーに署名してもらう。これにより、悪い習慣に即時的な苦痛を伴わせることができる。


 

さらなる戦略:改善するだけでなく、本物になるには

 

 

第18章 才能の真実

 

  • 遺伝子と環境: 成功の確率を最大化する秘訣は、自分の才能や性質に合った「正しい競争分野」を選ぶこと。遺伝子は運命を決定しないが、有利な分野を教えてくれる。

  • 自分の性質に合った習慣: 人気の習慣ではなく、自分の性格(ビッグ・ファイブなど)に合った習慣を選ぶことで、継続が楽しく、容易になる。

  • 探索と開発: キャリアの初期段階では幅広く「探索」し、自分に合った分野を見つけたら、そこに集中して「開発」する。80~90%は開発に、10~20%は新たな探索に使い続けるのが理想的。

  • 自分に問うべき質問:

    • 自分には楽しいが、他人には仕事に思えることは何か?

    • 時間を忘れてしまうものは何か?

    • 普通の人より良い評価を得られる分野は何か?

 

第19章 ゴルディロックスの原理

 

  • 最適な難易度: 人は、現在の能力のギリギリ達成可能なライン(難しすぎず、簡単すぎない)の課題に取り組むときに、最もモチベーションが高まる(ゴルディロックスの原理)。

  • 退屈という最大の敵: 成功を最も脅かすのは失敗ではなく「退屈」。習慣が日常になると、面白みがなくなり、飽きてしまう。

  • プロとアマの違い: プロフェッショナルは、気分が乗らない時や退屈を感じた時でも、スケジュールを守り、やるべきことを淡々とこなすことができる。退屈に恋をすることが、優れた結果を生む。

 

第20章 良い習慣のマイナス面

 

  • 習慣と熟練: 習慣は熟練の土台だが、自動化されると小さなミスに気づかなくなり、成長が止まることがある。「習慣+計画的な練習=熟練」である。

  • 見直しと考察の仕組み: 定期的に自分の習慣や信念がまだ役に立っているかを見直し、軌道修正する仕組みを持つことが重要(年次レビュー、誠実レポートなど)。

  • アイデンティティーを小さく保つ: 一つのアイデンティティー(例:「私は医者だ」)に固執しすぎると、環境の変化に対応できなくなる。役割ではなく、より本質的な資質(例:「私は人を助けるのが得意な人間だ」)で自分を定義することで、柔軟性を保つことができる。

 

結論

 

  • 成功とは仕組みである: 成功はゴールではなく、果てしない改善のプロセスである。

  • 小さな習慣の複利効果: 一つ一つの小さな変化は無意味に見えるかもしれないが、それらが積み重なることで、人生の天秤は有利な方へと傾き、やがて劇的な変化が訪れる。やめないだけで、驚くほどのものを築くことができる。これが「アトミック・ハビッツ」の力である。

     

     

★JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則 を読んで

 

 

【書評】『JUST KEEP BUYING』- データが示す、最もシンプルで強力な富の築き方

 

「投資を始めたいけど、何から手をつけていいかわからない」

「株価の変動を見るたびに、不安で眠れない夜を過ごしている」

「節約ばかりの毎日に疲れた。もっと収入を増やす方法はないだろうか?」

もしあなたが、お金に関するこんな迷いや悩みを抱えているなら、本書**『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』**は、あなたの資産形成の旅における、最も信頼できる”コンパス”となるでしょう。

本書の最大の特長は、著者が全米屈指のデータサイエンティストであるという点です。巷に溢れる「個人の成功体験」や耳障りの良い「精神論」とは一線を画し、過去100年以上の膨大な金融データを徹底的に分析し、そこから導き出された「証明済の方法」だけを提示しています。

その核心的なメッセージは、タイトルにもなっている**「ジャスト・キープ・バイイング(ただ、買い続けなさい)」**という、驚くほどシンプルな法則です。これは、タイミングを計ったり、市場を予測したりといった神業を必要とせず、誰でも今日から実践できる普遍的な戦略です。

本書は「いつ買うべきか?」「暴落時はどうするべきか?」「個別株は買うべきではないのか?」といった、すべての投資家が一度は抱く疑問に対し、感情を挟む余地のない**「データ」という客観的な事実**をもって、明快な答えを示してくれます。その切れ味は、あなたの投資に関する迷いを一刀両断し、明日からの行動を確固たるものに変えてくれる力を持っています。

貯金と投資、どちらを優先すべきかという入口から、住宅購入、リタイアといった人生の大きな節目、そして最終的に「一番重要な資産は時間である」という、お金を超えた本質的なテーマまで。本書は、あなたの人生に寄り添い、長期的な視点で富を築くための、まさに「お金と時間の法則」のすべてが詰まった一冊です。


 

『JUST KEEP BUYING』- 資産形成の全技術

 

本書『JUST KEEP BUYING』で語られる、データに基づいた合理的かつシンプルな資産形成の法則を、各章ごとに徹底的に要約しました。

 

【第1章】どこから始めるべきか? ――お金がない人は「貯金」を、お金がある人は「投資」を重視すべき理由

 

  • 現状の経済状況で優先順位を決める: 資産形成の初期段階と、ある程度資産ができてからでは、注力すべきポイントが異なる。

  • 「予想貯金額」 vs 「予想投資収益額」:

    1. まず、今後1年間に無理なく**貯金できる額(予想貯金額)**を算出する。

    2. 次に、現在の投資資産から得られる**1年間の収益額(予想投資収益額)**を計算する。(例:資産100万円、年利5%なら5万円)

    3. 両者を比較し、「予想貯金額」の方が多いなら、貯金を増やすことに集中すべき。収入を増やし、それを投資に回すインパクトが最も大きい。

    4. 「予想投資収益額」の方が多い、あるいは近い場合は、投資計画(ポートフォリオの最適化など)に時間を費やすべき

  • 年齢とともに焦点は移る: 一般的に、若いうちは「貯金」に、年齢を重ね資産が増えるにつれて「投資」へと焦点を移していくのが合理的。


 

【第1部】貯金力アップ篇

 

 

【第2章】どのくらい貯金すればいいのか? ――思っているほど多く貯めなくても大丈夫

 

  • 貯蓄率は収入水準に大きく依存する: 高所得者ほど貯蓄率は高くなる。そのため、「収入の2割を貯金しよう」といった画一的なルールは多くの人にとって現実的ではない。

  • 最良のアドバイスは「できる範囲で貯金する」: 人生のステージによって収入は変動する。収入が多い時は多く貯金し、少ない時は少なく貯金する。この柔軟な考え方が、貯金からくる過度なストレスを減らし、幸福度を高める。

  • 年金受給者の現実: 多くの年金受給者は、実際には資産の元本を取り崩さず、投資収益の範囲内で生活している。データ上、「お金がなくなることの恐怖」が、実際にお金がなくなるリスクよりも大きな問題となっている。

  • 公的年金もゼロにはならない: 米国の社会保障制度は、仮に現状のまま変更がなくても、将来の受給者は給付金の約8割を受け取れると推定されている。過度に悲観する必要はない。

 

【第3章】こうすればもっと貯金できる ――パーソナルファイナンス最大のウソ

 

  • 節約は、やせるための運動に似ている: 運動は健康に良いが、それだけで体重を減らすのは難しい。同様に、節約だけで富を築くのは非常に困難。支出を切り詰めることには限界がある。

  • 富を築くための王道: 成功への道は突き詰めると**「収入を増やし、そのお金を収益を生み出す資産に投資する」**こと。

  • 「人的資本」を「金融資本」に変える5つの方法:

    1. 時間単位の専門サービス: 自分の技能や専門知識を時間単位で提供する。初期コストが少なく始めやすい。

    2. 出来高制の専門サービス: 写真撮影やデザインなど、成果物に対して報酬を得る。高い報酬が期待できる。

    3. 人に教える: オンライン教育など。スケールメリットがあるが、競争が激しい。

    4. 商品を売る: 人々の悩みを解決する商品を開発・販売する。スケールメリットは大きいが、先行投資やマーケティングが必要。

    5. 会社で昇進する: データ上、多くのミリオネアにとって有効な方法。経験と技能を磨き、安定した収入を得られる。起業するにしても、会社員経験は大きなアドバンテージになる(起業家の平均年齢は40歳)。

  • 最終目標は「オーナーになること」: 収入を増やし、そのお金で「さらなる収入を生み出す資産(自分のビジネス、他人のビジネス=株式など)」を取得することが、長期的に富を築くための最終ゴール。

 

【第4章】罪悪感なしでお金を使う方法 ――「2倍ルール」と充実感の最大化

 

  • 罪悪感なくお金を使うための新しい考え方:

    1. ① 2倍ルール: **「自分が贅沢と感じる買い物をするときは、必ずそれと同額を投資する」**というシンプルなルール。4万円の靴を買うなら、4万円をインデックスファンドに投資する。これにより、将来への投資と現在の楽しみを両立できる。

    2. ②「充実感」を第一に考える: 一時的な快楽ではなく、持続的な心の豊かさにつながるお金の使い方を優先する。

  • 充実感が得られるお金の使い方:

    • 体験を買う(旅行、コンサートなど)

    • 時間を買う(家事代行、タクシーなど)

    • 人のために使う(プレゼント、寄付など)

    • 前払いする(事前に支払うことで、当日の楽しみが増す)

  • 重要なのは「どんな基準で買うか」: 自分の価値観(自律性、熟達、目的意識など)に合った使い方をすれば、罪悪感は生まれない。人生で本当に欲しいものを見つけることが本質。

 

【第5章】収入アップに合わせて生活レベルを上げるのは、どれくらい許される? ――世間で思われている以上に、給料が増えた分、豊かさは享受できる

 

  • ライフスタイル・クリープは必ずしも悪ではない: 収入増に合わせて生活レベルを上げることは、適切に行えば満足度を高める。

  • 昇給額のどれくらいを使っていいか?: 複雑な計算は不要。ほとんどの人にとってのシンプルな答えは**「約50%」**。

  • 「昇給額の50%を貯金(投資)する」ルール: このルールを守れば、現在の貯蓄率がどうであれ、多くの場合は元々のリタイア計画を崩さずに、生活レベルの向上を享受できる。

  • 貯蓄率が低い人ほど上げやすい: 意外にも、現在の貯蓄率が低い人ほど、収入アップ分をより多く生活レベルの向上に使える。

 

【第6章】借金はすべきか? ――クレジットカードの負債が必ずしも悪ではない理由

 

  • 借金が合理的な2つの理由:

    1. リスクを減らすため: 不確実な未来に対するリスクヘッジとして機能することがある。

    2. 借入コストを上回るリターンが生み出せるため: 借金によって得られる将来の利益が、支払う利息を上回る場合。

  • 人生を変える「良い借金」の例:

    • 教育ローン(自己投資): 学位取得によって生涯収入が増加する場合。その価値は**「学位の現在価値 = (生涯収入の増加分 ÷ 2) - 逸失利益」**で計算できる。

    • ビジネスローン(起業)

    • 住宅ローン(資産購入)

  • 避けるべき「悪い借金」: 住宅ローン以外の負債(カードローンなど)は、心身の健康に悪影響を与えるという研究結果がある。

  • 借金できることは幸運: 多くの人にとって負債は義務であり、選択ではない。借金を「選択」できる立場にいること自体が幸運であると認識すべき。

 

【第7章】家は借りるべきか買うべきか? ――人生最大の買い物をどう考えるか

 

  • リスクは時間軸で逆転する:

    • 短期的: 持ち家は維持費など不確定なコストが多く、賃貸よりリスクが高い。

    • 長期的: 持ち家はローン返済額が固定されるため、インフレが進むと家賃が上昇する賃貸よりリスクが低い。

  • 投資対象としての住宅: データ上、米国株インデックスファンドと比較すると、リターンは大幅に劣る。優れた長期投資とは言えない。

  • 重要なのは「いつ買うべきか?」: 持ち家か賃貸かの二者択一ではなく、購入のタイミングが最も重要。

  • 住宅購入に踏み切るべき3つの条件:

    1. 10年以上はその土地に暮らす予定がある

    2. 公私ともに安定した生活を送っている

    3. 経済的余裕がある(頭金20%を支払え、ローン返済負担率を43%未満に抑えられる)

  • 購入のタイミング: 住宅ローンは将来がある程度予測できるようになった時に組むべき。人生で最もリスクが高いのは購入後の最初の数年間。

 

【第8章】頭金を貯める方法 ――なぜ「時間軸」が大切なのか?

 

  • 資金を貯める最適な方法は「時間軸」で決まる:

    • 目標期間が3年以内: 価値が大きく下落するリスクが少ない現金で貯めるのが最適。インフレによる目減りより、元本割れリスクを避けることを優先。

    • 目標期間が3年以上: 現金保有によるインフレリスクの方が大きくなるため、債券への投資を検討すべき。

    • 目標期間が5年以上: 株式なども含めた、自身のリスク許容度に合わせたバランスの取れたポートフォリオを組むのが良い。

 

【第9章】いつリタイアできるか? ―― 一番大切なのは「お金」ではない

 

  • リタイア時期を判断するシンプルなルール:

    • ① 4%ルール: リタイア後の生活費を資産から毎年4%ずつ取り崩しても、30年以上資産が枯渇しないという経験則。

      • 必要なリタイア資産 = 25 × 年間の(超過)支出額

      • ※「超過」支出とは、年金などの収入を差し引いた、資産から賄う必要のある支出額。

    • ② クロスオーバーポイント: 毎月の投資収益が、毎月の支出額を上回る時点。経済的自立を達成した状態。

      • 必要な資産 = 月次支出 ÷ 月次投資収益率

  • リタイアはライフスタイルの問題: お金はリタイアの必要条件の一つに過ぎない。データ上、幸福度には「心身の健康」や「豊かな人間関係」の方が重要。

  • 「何のために」リタイアするのか?: 仕事をやめた後の人生で何をしたいのかを明確にすることが、経済的な準備と同じくらい重要。目的のないリタイアは退屈と虚無感につながる可能性がある。


 

【第2部】投資力アップ篇

 

 

【第10章】なぜ投資すべきか? ――お金を増やすことが重要な時代になった3つの理由

 

  • 理由1: 将来の自分のため: いつかは働けなくなる。老後の自分をリアルに想像することが、長期的な投資行動を促す。

  • 理由2: インフレに対抗するため: 現金を持っているだけでは、インフレによって実質的な価値が目減りしていく。インフレは「目に見えない税金」。投資はインフレから資産を守る唯一の武器。

  • 理由3: 「人的資本」を「金融資本」に置き換えるため: 若いうちは労働で稼ぐ力(人的資本)が最大の資産。年齢とともに人的資本は衰えるため、働かなくてもお金を生み出してくれる金融資本に置き換えていく必要がある。

 

【第11章】何に投資すべきか? ――「富への唯一絶対の道」は存在しない

 

  • 富を築く方法は一つではない: 自分に合った投資対象を見つけることが重要。あらゆる投資対象を検討すべき。

  • 様々な収益資産:

    • 株式: 長期的に最も富を生み出す信頼性の高い資産。インデックスファンドやETFでの分散投資を推奨。

    • 債券: リターンは低いが、変動性が低くポートフォリオの安定化に寄与。「よく眠るため」に保有する。

    • 不動産物件: レバレッジ効果で高いリターンが期待できるが、管理の手間や空室リスクがある。

    • REIT不動産投資信託: 手間をかけずに不動産を保有でき、高い配当が期待できる。

    • 農地: 株式との相関が低く、優れたインフレヘッジになる。

    • エンジェル/中小企業投資: 非常に高いリターンが期待できるが、失敗率も高く、多大な時間と専門知識が必要。

    • ロイヤリティ: 音楽など。金融市場との相関が低い安定収入源になりうるが、手数料が高い。

    • オリジナル商品: 自身のブログやストアで販売。成功すれば大きなリターンがあるが、手間がかかり保証もない。

  • 非収益資産との区別: 金や仮想通貨、芸術品などはそれ自体が収益を生み出すわけではない。資産価値は他人の評価に依存する。ポートフォリオの一部(10%以下など)に留めるべき。

 

【第12章】個別株は買うな ――個人投資家を焼き尽くす投資哲学

 

  • 個別株投資に反対する2つの主張:

    1. 金融論的な主張: 長期的に見て、プロのファンドマネージャーでさえ、市場平均(インデックスファンド)に勝つのは極めて難しい。

    2. 存在論的な主張: そもそも「自分の銘柄選びが上手いかどうか」を客観的に判断することが不可能。株価の変動要因は複雑で、結果が運なのか実力なのかを区別できない。

  • 富を生み出したのはごく一部の銘柄: 1926年~2016年で、米国債を上回るリターンを生み出したのは、わずか**4%**の株式。その4%を選び続ける自信はあるか?

  • 企業の寿命は短い: 1950年以降、米国上場企業の半数は十数年以内に姿を消している。

  • 結論: 個別株投資は運の要素が大きすぎるゲーム。インデックス投資に徹する方がはるかに合理的。

 

【第13章】いつ投資すべきか? ――なぜ早いほうがいいのか

 

  • 歴史が示す事実: ほとんどの市場は、ほとんどの期間、上昇している。

  • 「即一括投資」 vs 「分割投資(ドルコスト平均法)」: 手元にまとまった資金がある場合、データを分析すると、ほとんどのケースで**「即一括投資」の方が「分割投資」よりもパフォーマンスが高い**。

  • 市場が割高に見えても一括投資: CAPEレシオのような割高指標が高い時でも、結果は同じ。投資を待つことで、その後の大きな上昇を逃す機会損失の方が大きい。

  • リスクが怖い場合の解決策: もし100%株式での一括投資が怖いなら、株式60%/債券40%のようなリスクを抑えたポートフォリオで「即一括投資」する。この方が、100%株式で分割投資するよりも、同程度のリスクで高いリターンが期待できる。

 

【第14章】安値を待つべきではない理由 ――神でさえ「ドルコスト平均法」には勝てない

 

  • 「バイ・ザ・ディップ(押し目買い)」の罠:

    • シミュレーションでは、いつが底値かを完璧に予知できる「神」の視点で押し目買いをしても、40年間のうち70%以上の期間で、ただ毎月買い続ける「ドルコスト平均法」に負けるという結果が出ている。

  • なぜドルコスト平均法が勝つのか: 押し目買い戦略は、下落を待つ間、現金を市場の外に置いておくことになる。しかし、市場は長期的には上昇傾向にあるため、この「待っている時間」の機会損失が非常に大きい。

  • 結論: 市場のタイミングを計ろうとすることは無意味。最も優れた投資法は、ただ淡々と、定期的に買い続けること(ジャスト・キープ・バイイング)。

 

【第15章】投資が「運」に左右される理由 ――と、なぜ「運」を気にしすぎる必要がないのか?

 

  • 投資成果は「いつ投資を始めたか」に大きく左右される: 投資を始めた時期の市場環境によって、同じ実力の投資家でもリターンに大きな差が生まれる。

  • リターン順序のリスク: 投資期間のうち、資産額が最も大きくなる後半のリターンが、最終的な資産額に最も大きな影響を与える。特に、リタイア直後の10年間の市場が悪いと、資産に大きなダメージを与える可能性がある。

  • 投資の「不運」を軽減する3つの方法:

    1. 低リスク資産(債券など)への分散投資: 株価下落時に債券を売ることで、株の損失確定を避けられる。

    2. 市場低迷時は資産の取り崩し率を減らす: 4%ルールに固執せず、一時的に2~3%に下げるなど柔軟に対応する。

    3. パートタイムで働くなど収入を補う: 資産を取り崩す代わりに、少しでも収入を得る。

 

【第16章】相場の変動を恐れるな ――投資で成功するための「入場料」

 

  • ボラティリティは避けられない: 株式市場では、年平均で10%以上の下落は当たり前に起こる。この変動は、長期的なリターンを得るために支払うべき**「入場料」**と考えるべき。

  • 下落を避けようとするとリターンを逃す: データ分析によると、下落を恐れて市場から退場する戦略(下落回避戦略)は、常に市場に居続ける戦略(バイ・アンド・ホールド)に比べて、資産が大幅に少なくなる。

  • すべての下落が悪いわけではない: 年間最大下落率が10%以下の場合、最終的な年間リターンはプラスで終わることがほとんど。

  • 覚悟を持つ: 1世紀に2~3回は起こるであろう50%の市場暴落に耐える覚悟がなければ、大きなリターンは期待できない。

 

【第17章】暴落時の投資法 ――パニック時でも平静さを保つメンタル

 

  • 「通りで血が流れているときが買い時」: 歴史的な暴落は、後から見れば絶好の買い場である。

  • 暴落時のリターンを計算する: たとえ市場が33%下落しても、その回復に5年かかると仮定した場合でさえ、その時点で投資すれば年率8%のリターンが期待できる。これは米国株の長期平均リターンとほぼ同じ。暴落時の買いは、確率的に見て非常に有利な賭け。

  • データが恐怖に打ち勝つ: 市場が50%以上下落した場合、その後の回復までの平均年間リターンは通常25%を超える。歴史的なデータが、パニック時でも冷静に行動することの重要性を示している。

  • 日本市場の例は特殊: 30年以上最高値を更新していない日本のような例もあるが、世界中の株式市場を長期で見れば、損失を被る確率は低い(30年投資で12%)。

 

【第18章】いつ売ればいいのか? ――リバランス、集中投資状態、投資の究極の目的について

 

  • 基本原則は「早く買い、ゆっくり売る」: ほとんどの市場は上昇するため、売却はできるだけ遅らせるのが合理的。

  • 売却を検討すべき3つのタイミング:

    1. ① リバランスのため: ポートフォリオのリスクを管理するため。資産の比率を元に戻す作業。リバランスはリターン向上ではなく、リスク低減が目的。年に一度の実施を推奨。

    2. ② 集中投資(または損失)状態から抜け出すため: 特定の銘柄に資産が集中しすぎた場合、リスクを分散させるために一部を売却する。

    3. ③ 自分の経済的なニーズを満たすため: 生きたい人生を生きるためにお金を使う。これが投資の究極の目的。

  • 買い増しリバランス: 資産を売却せずに、目標比率より少なくなった資産クラスを買い増すことでリバランスする方法。税金がかからず効率的。

 

【第19章】資産が増えてもお金持ちと感じられない理由 ――なぜ、あなたはすでに豊かなのか?

 

  • 「金持ち」は相対的な概念: 人は常に自分より裕福な人と比較してしまうため、自分が金持ちだと感じにくい。

  • 友情のパラドックス: 友人が多い人は、そうでない人よりも多くの人の「友人リスト」に含まれやすい。これと同じで、裕福な人はメディアなどで目にする機会が多く、自分の周りにたくさんいるように感じてしまう。

  • 世界的な視点: 純資産が9万3170ドル(約1400万円)以上あれば、あなたは**世界の上位10%**に入る富裕層である(2018年時点)。

  • 秘訣: 上ばかり見ずに、自分がどれだけ恵まれているかを認識することが、豊かさを感じるためのカギ。

 

【第20章】一番重要な資産 ――なぜそれはこれ以上増やすことができないのか

 

  • 究極の資産は「時間」: ウォーレン・バフェットでさえ、全財産と引き換えにしても若さを手に入れたいと考えるだろう。お金では時間は買えない。

  • キャリア初期の決断が重要: 人の収入が最も急速に増加するのは25~35歳の最初の10年間。この時期は、投資ポートフォリオを細かく見ることよりも、キャリア構築に時間を費やす方が、生涯資産に大きな影響を与える。

  • お金は時間より重要ではない: 資産が10倍程度増えない限り、生活レベルに劇的な変化は生じない。しかし、時間の使い方は人生を根本から変える力を持つ。

  • 幸福度のU字カーブ: 多くの人の幸福度は20代後半から低下し始め、50歳で底を打ち、その後上昇していく。年齢を重ねるごとに、人生が期待以上に豊かなものであることに気づいていく。


 

【巻末プレミアム】 「ジャスト・キープ・バイイング」21の黄金ルール

 

本書の教えを21のシンプルなルールに凝縮したもの。日々の意思決定の指針となる。

  1. お金がない人は「貯金」を、お金がある人は「投資」を重視すべき

  2. できる範囲で貯金する

  3. 節約よりも収入アップ

  4. 「2倍ルール」で罪悪感を減らす

  5. 収入アップ分の50%以上を貯蓄する

  6. 借金は使い方次第

  7. 家は適切な場合のみ購入する

  8. 頭金は、まず現金で貯めることを検討する

  9. リタイアで大切なのはお金だけではない

  10. 減り続ける「人的資本」を「金融資本」に置き換えるために投資する

  11. オーナーのように考え、収益資産を買う

  12. 個別株は買わない

  13. 早く買ってゆっくり売る

  14. できるだけ頻繁に投資する(ジャスト・キープ・バイイング)

  15. 投資とは配られたカード(運)ではなく、そのカードを使ってどうプレーするか(戦略)

  16. 相場の変動は必然的に発生するが、恐れてはいけない

  17. 暴落は(通常は)買いのチャンス

  18. 十分な暮らしができるお金を確実に得ることを重視する

  19. どれだけ資産が増えても、金持ちになったとは感じないが、それは問題ない

  20. 時間ほど重要な資産はない

  21. 私たちはすでにこのゲームをプレーしている(意識して最善の選択をしよう)

     

     

★1人起業家マインドセット を読んで

 

 

【書評】「1人起業家マインドセット」- 競争から抜け出し、「好き」を仕事に。自分らしく輝くための新しい働き方バイブル

 

「好きなことを仕事にしたいけど、何から始めればいいかわからない…」

「会社員として働くことに、漠然とした不安や窮屈さを感じている…」

「起業に興味はあるけれど、失敗するのが怖くて一歩が踏み出せない…」

もし、あなたがこのような悩みを抱えているなら、本書**「1人起業家マインドセット」**は、まさにあなたのための羅針盤となる一冊です。

本書は、単にお金を稼ぐためのテクニックを解説したビジネス書ではありません。変化の激しい「風の時代」において、いかにして**「行動の自由」「人間関係の自由」「お金の自由」「意思決定の自由」**という4つの自由を手に入れ、自分らしく幸せに働き、生きるか。そのための根本的な「あり方」と具体的な「やり方」を示してくれます。

著者は、1人起業家を「好きなことをベースにして働き、仕事のゴール(ビジョン・目的)に向かって、自分を輝かせながら幸せに生きる人」と定義します。本書の最大の特長は、この「ビジョン」の重要性を一貫して説いている点です。小手先のマーケティングSNS戦略に走る前に、なぜ自分がその仕事をするのか、その仕事を通してどんな世界を実現したいのかという高次元のビジョンを掲げることこそが、競争の激しいレッドオーシャンを抜け出し、自分だけのブルーオーシャンを創造する魔法になると教えてくれます。

挫折経験すらも「変身資産」と捉え、直感を信じて「仮決め」で行動を起こすマインドセット。競争せずに顧客から選ばれるための「ずらし戦略」。そして、オンリーワンの存在になるための「ニッチスター戦略」。本書で語られるこれらの概念は、あなたのビジネスに対する考え方を根底から覆し、失敗を恐れずに行動する勇気を与えてくれるでしょう。

もしあなたが、誰かの価値観ではなく、自分の「好き」という情熱を羅針盤にして人生の航海に出たいと願うなら、ぜひ本書を手に取ってみてください。そこには、あなただけの宝の地図が隠されているはずです。


 

【要約】「1人起業家マインドセット」- 幸せな成功を手に入れるための全知識

 

本書「1人起業家マインドセット」で語られる、好きなことを仕事にして自由を手に入れるためのエッセンスを、各章ごとに詳しく要約しました。

 

第0章 僕が1人起業家になったわけ

 

  • 挫折は「教材」である: 過去の挫折や失敗は、封印すべき負の歴史ではなく、自分を成長させるための「変身資産」。この資産が多いほど、変化の激しい時代に対応できる強さを持つ。

  • 無職は「無色」: 仕事がない状態は、人生という真っ白なキャンバスをもう一度与えられたチャンス。誰にも邪魔されず、本当に描きたい人生を自由に描くことができる。

  • 「仮決め」でいいから始める: まずは自分がなりたい姿、描きたい人生を「仮決め」してみる。完璧な計画は不要。

  • 原動力は「好きなこと」: 1人起業家になるために必要なものは、ただ一つ。「好きなこと」さえあれば、誰でもスタートラインに立てる。

 

第1章 1人起業家という新時代の働き方

 

  • 時代の大きな変化: 現代は、ゼネラリストから連続スペシャリストへ、孤独な競争からみんなでイノベーションへ、金儲けと消費から情熱を傾けられる経験へと価値観がシフトしている。

  • マルチステージモデルの生き方: 人生100年時代、その都度「やりたいこと」「好きなこと」を選択し、仕事にしていく生き方が主流になる。

  • 「風の時代」の価値観: 物質的な豊かさ(地の時代)から、精神的な豊かさ(風の時代)へ。個人の「らしさ」が重視され、価値観の合う人との「共有」が幸せにつながる。

  • お金は目的ではなく「道具」: 1人起業家は、お金を幸せの尺度にしない。好きなことを継続するために、結果としてお金を稼ぐというスタンスが基本。

  • 成功のカギは「ビジョン」: ビジネスがうまくいかない最大の理由は「ビジョン」の欠如。ビジョンを持つことには4つの大きなメリットがある。

    1. エネルギーが生まれ、判断に迷わなくなる

    2. 困難があっても継続できる

    3. 商品やサービスに共感が生まれやすくなる

    4. ビジョンに共感する仲間が増える

  • 1人起業家が手に入れる「4つの自由」:

    1. 行動の自由: やりたいことだけをやれる。

    2. 人間関係の自由: 好きな人とだけ付き合える。

    3. お金の自由: 誰の承認も得ず、自分の判断でお金を使える。

    4. 意思決定の自由: すべての判断を自分で下せる。

  • 1人起業家の3つの働き方:

    1. フォーカス起業家: 1つの事業に特化する。

    2. パラレル起業家: 複数の事業を並行して行う。(著者が最も推奨)

    3. 複業起業家: 企業に勤めながら事業を行う。

  • 「自己変態理論」で成長する: 他人軸で生きる「固体」の状態から、自己を理解しタネを育てる「液体」の段階を経て、自分軸で仲間と連携する「気体」のステージへと変態・成長していく。

 

第2章 「好きなこと」を確実に見つける方法

 

  • 「好き」の3つの分類: 自分の「好き」がどれに当てはまるか分析することで、自己理解が深まる。

    1. コンテンツ(内容): 特定のジャンルや対象そのものが好き。

    2. プロセス(過程): 対象を取り扱う過程や作業が好き。

    3. パーパス(目的): 対象がもたらす目的や意義が好き。(起業のタネになりやすい)

  • 直感で行動してみる: 好きなことが見つからないなら、「なんかいいかも」という直感に従って、まず行動してみることが重要。

  • 自己理解を深める4つの方法:

    1. 人生グラフを作る: 過去の人生の充実度を折れ線グラフにし、喜びや苦しみ、学びを言語化する。

    2. 価値観ワーク: 自分が何を大切にしているかを知る。

    3. ジブンガタリ: 複数人で「好きなこと」「挫折」「本当にやりたいこと」などを語り合う。

    4. ハタモク・タマモク: 「働く目的」と「魂の目的」を語り合うことで、本音にアクセスする。

  • 他者からのフィードバック: 「得意そうなこと」「好きそうなこと」など6つの問いを他者に聞き、自分では気づかない「盲点の窓」を開く。

  • スピリチュアル分析: 占星術数秘術など、論理を超えたアプローチも自己理解の突破口になりうる。

  • 「出まかせ」で語る: やりたいことが見つかったら、どんどん周りに話してみる。言葉にすることで現実が動き出す。

 

第3章 「1人起業家マインドセット」で幸せに成功する

 

  • 行動だけが現実を創る: 思考や計画だけでは何も変わらない。行動することがすべて。

  • 「決める」ことで人は動く:

    • 「仮決め」でいい: 完璧な決定は不要。まず決めて動き出す。

    • やめていい、変えていい: 決めたことに固執せず、柔軟に変更していい。

    • 決めたことは「育てる」: 決断を正解にしていくのは、その後の行動。

  • 直感を信じる: 直感の的中率は約90%という研究もある。論理だけでなく、「なんとなく」という感覚を大切にする。

  • 言葉の意味を書き換える:

    • 失敗: 「成功する人に必ず訪れる経験」と再定義する。

    • 洗脳: 他人からのコントロールではなく、なりたい自分になるための「ブレインウォッシュ」として活用する。

  • 「ビジョン設定の6つの視座」で視座を上げる:

    • レベル1: 事実の目線

    • レベル2: 論理の目線(個人の損得)

    • レベル3: 感情の目線(自分の感情)

    • レベル4: 願いの目線(自分が叶えたい願望)

    • レベル5: 集合の目線(「私たち」の願望) ← 戦略的に重要

    • レベル6: 統合の目線(世界や地球規模の願い)

  • 健全な「利己」と「利他」のバランス: 利己49:利他51くらいのバランスが、持続可能なビジネスにつながる。

  • 計画より行動のサイクル: 事業計画書は不要。「やって → 楽しんで → 感じて → 考えて → またやる」というサイクルを高速で回す。

 

第4章 「ずらし戦略」で競争力を磨く

 

  • レッドオーシャンで戦わない: 「普通の人」がマーケティングSNS発信を学んでも、競争の激しい市場で勝つのは無謀。

  • 目指すはブルーオーシャン: 「既存事業をブルーオーシャンにずらす」ことが1人起業家の戦略。

  • 魔法は「ビジョン」: 商品を売るのではなく、「ビジョンに共感してもらう」ことで、競争のない市場を創造する。

  • 「ずらし戦略」7つのステップ:

    1. ステップ① 商品サービスを「仮置き」する: 直感でやってみたい仕事を置く。

    2. ステップ② ビジョンを「上にずらして」仮決めする: 視座の高い(レベル5, 6)ビジョンにアップデートする。

    3. ステップ③ コンセプトを「横にずらして」仮決めする: ビジョンを実現する方向性(=あなたは何屋さんか?)を決める。

    4. ステップ④ 商品サービスを仮決めし直す: ビジョンとコンセプトに合った商品に修正する。

    5. ステップ⑤ 情報発信メディアを選ぶ: 自分の戦略に合ったメディアを選択する。

    6. ステップ⑥ セールス・マーケティングの設計図を描く: 価値を届けるプロセスをデザインする。

    7. ステップ⑦ 集客して感動を届ける: 設計図に沿って行動を開始する。

  • コンセプトの作り方:

    • 「誰に」「どんな価値」を届けるか明確にする。(「みんなに」はNG)

    • オリジナルの付加価値を加える。

  • 商品サービスの作り方:

    • ネーミング: コンセプトを体現する名前を考える。(掛け算、4文字、頭文字など)

    • 価格設定: 原価や相場ではなく、**「価値創造方式」**で決める。勇気を持って強気の価格を設定し、それに見合う価値を提供する。

    • 「松・竹・梅」モデル: 3つの価格帯を用意し、体験商品(梅)で接点を作り、本命商品(竹)を売りやすくする。

  • 情報発信メディアの重要度:

    • SNS (インスタ、Xなど): 重要度5

    • メルマガ/公式LINE: 重要度4

    • 動画 (YouTubeなど): 重要度4

    • ホームページ: 重要度3

    • ブログ (noteなど): 重要度2.5

  • マーケティングファネル: 「①リーチ → ②興味・関心 → ③内容理解(フロントエンド商品) → ④意向・検討 → ⑤購入(バックエンド商品) → ⑥推奨(クチコミ)」の段階を踏んで顧客との関係を深める。

  • 波紋マーケティング:

    • 第1波(初期): 知り合いに個別DMを送る。

    • 第2波(初期〜中期): クチコミ紹介やリピート購入を依頼する。

    • 第3波(中期以降): SNS広告やプレスリリースなどを活用する。

 

第5章 「ニッチスター戦略」でオンリーワンになる

 

  • ニッチスターとは: 「ニッチな業界のスター(インフルエンサー)」のこと。マスを目指すのではなく、特定の分野で唯一無二の存在になる。

  • 「自分だまし力」を身につける:

    1. SNSのプロフィールを変える: 未来のなりたい自分の肩書きを遠慮なく書く。

    2. 名刺の肩書きを変える: 「作家」「連続起業家」など、理想の自分を名乗る。

  • ビジョンで覚えてもらう: 商品サービスではなく、「あのビジョンを語っていた人だ」と認知されることを目指す。

  • ビジョンは更新し続ける: 企業の理念とは違い、個人のビジョンは2〜3ヶ月に一度見直すなど、柔軟にアップデートしていく。考え続けるプロセス自体が重要。

  • 愛される「ポンコツ」力: 完璧な自分を演じるのではなく、弱さやダメな部分も含めてさらけ出すことで、人は親近感を抱き、応援したくなる。

  • かわいがられるための3つの実践:

    1. 素直である: アドバイスを素直に受け入れ、実践する。

    2. 感謝する: どんな小さなことにも感謝の気持ちを伝える。

    3. 子どもに戻る: 常識や他人の目を気にせず、純粋な好奇心で楽しむ。

 

第6章 「コミュニティ・コラボ戦略」で次のステージに飛躍する

 

  • 人生を変える3つの方法: 「住む場所を変える」「時間配分を変える」そして最も手軽なのが**「付き合う人を変える」**こと。

  • コミュニティの5つの価値:

    1. メンター: 導いてくれる存在との出会い。

    2. コンテンツ: 新しい知識や情報。

    3. 仲間・つながり: コミュニティに入る最大の価値。

    4. : 運がいい人たちと同じ場にいることで、運気をもらう。

    5. アウトプットの場: インプットだけでなく、実践・挑戦できる場。

  • 損得勘定でつながると失敗する: 「儲かりそう」という打算的な関係は長続きしない。ピュアなビジョンで語り合える仲間とつながることが大切。

  • ビジョンベースドマネジメント: カリスマリーダーがいなくても、強烈なビジョンに共感するメンバーが集まることで、強靭なチームが作られる。スキルよりもビジョンへの共感が最優先。

  • コラボレーションで注意すべき3つの点:

    1. 似た者同士で組まない。

    2. 自分より能力の高い人と組むことを恐れない。

    3. 仕事を「お願い」するのではなく、「一緒にやりたい!」と思わせる。

  • 早く行きたければ1人で。遠くまで行きたければみんなで: 1人起業家は「1人」だが、ビジョンでつながる仲間と共に、決して「独り」ではない。

 

おわりに 「好き」から始まる大きな循環

 

●億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド を読んで

 

 

 

書評:富への道は「凡事徹底」の先にあり

 

本書は、元ゴールドマン・サックスの著者が、会社員時代に目の当たりにした「億を超える人々」の哲学、思考、そして習慣を解き明かす一冊だ。単なる成功譚や投資テクニックの羅列ではない。本書の核心は、富裕層とは決して特別な才能を持つ人々ではなく、「誰でもできることを、誰も真似できないほど圧倒的にやり続ける」人々であるという力強いメッセージにある。

彼らは、運やチャンスを偶然の産物とは考えない。常に目標を明確にし、考え抜き、行動し続ける中で必然的に手繰り寄せるものだと知っている。その根幹にあるのが「習慣化」の力だ。早朝の運動、学び続ける姿勢、迅速な意思決定。これら一つ一つは地味かもしれないが、継続することで人生に複利の効果をもたらす。

また、金融リテラシーの重要性も繰り返し説かれる。投資と消費の線引き、手数料への意識、フェアバリューを見抜く目、そしてレバレッジの賢い使い方。これらは富を築くための必須スキルであり、日々の意識と学習によって誰でも身につけることができる。

本書は、お金だけでなく、時間、健康、人間関係という人生のあらゆる資本を最大化するためのロードマップを示してくれる。明日から実践できる具体的なヒントに満ちており、現状を打破し、より豊かな人生を目指すすべての人にとって、羅針盤となる一冊である。


 

『億を超える人』の思考と習慣:要約リスト

 

 

第1章:富裕層のマインドセットと定義

 

  • 富裕層の定義: 本書では「年収1億円以上」または「純資産5億円以上」の人を「億を超える人」と定義している。これは労働力人口の約0.037%(約2,726人に1人)に相当する希少な存在である。

  • 成功の本質: 富裕層は特別なことをしているわけではなく、「誰でもできることを圧倒的にやる」ことで成功を掴んでいる。

  • リスクの捉え方: 「何もしない」ことは失敗も損失もないが、何も生まない。富裕層は行動することの重要性を理解している。

  • お金と幸福の関係: お金を多く持つことと、幸せになることは全く別の話である。

  • 目標達成の要因: 目標が達成できないのは、「ゴール設定の間違い」「道筋の間違い」「努力不足」のいずれかが原因である。

  • 努力の複利: たった1%の怠慢を取り戻すには、翌日に3倍の努力が必要になる。日々の継続的な努力が重要である。

 

第2章:富裕層になるための2つの道筋

 

  • 富裕層の2類型: 現代の富裕層は、主に「金融エリート系」と「ベンチャー経営者系」の2つのパターンに分類される。

    • 金融エリート系: 大きな失敗をせず、着実に蓄財し、それを堅実に運用する「超王道」で成功するタイプ。ファンドなどを活用して資産を大きくジャンプさせる。

    • ベンチャー経営者系: 強い衝動や使命感を持ち、自ら事業を興すタイプ。成功すると、そのコミュニティ内で優良な投資話が舞い込み、さらに資産を増やすチャンスを得る。

 

第3章:「運」を掴むための3つの条件

 

  • 運の本質: 運やアイデアは偶然降ってくるものではない。目標に向かって考え抜き、死ぬほど努力し試行錯誤した最後の最後に舞い降りてくるものである。

  • 運を掴む3条件:

    1. 準備: 目標を明確にし、常に考え抜き、努力を重ねる。

    2. 見極め: 舞い降りてきたチャンスが「当たり」であるかを見極める力。

    3. 行動: チャンスだと気づいた時に、的確かつ迅速なアクションをとれること。

  • 行動と発信の重要性: 富裕層は下積み時代から常に行動し、行き詰まった現状や目標を正直に発信することを怠らない。その過程で協力者が現れたり、思わぬ機会が訪れたりする。

 

第4章:投資家としての意思決定

 

  • 自己決定の原則: 富裕層は投資の意思決定を他人に委ねない。お金のプロから複数の選択肢を提示させ、意見を聞いた上で、最終的には必ず自分自身で決断する。

  • 責任感: 自分の言動に責任を持つ習慣が、成功する投資家マインドの基礎となる。

  • スピードの価値: 意思決定において「速くて正しい」が最善だが、次善は「速くて間違っている」こと。判断が間違っていても、迅速な修正が可能であり、遅くて正しい判断よりも価値が高い場合がある。

  • 成功の3要素: 大きなリターンを得るためには、「意思決定」「スピード感」「確実性」の3つが不可欠である。

 

第5章:お金を増やすためのサイクルと原則

 

  • 成功の3要素サイクル: 富を築くには「①お金(自己資金)」→「②経験値」→「③人脈」の順番が重要。このサイクルを回し続けることで資産は増えていく。いきなり人脈から入ろうとすると詐欺などに遭うリスクが高い。

  • 手数料への意識:

    • 富裕層は銀行の金融商品販売(手数料ビジネス)を利用せず、証券会社と直接取引する。

    • 投資信託よりも手数料が安いETF(上場投資信託)を選ぶ傾向がある。

    • 「余計な手数料は投資した時点でのマイナス」という意識を常に持つ。

  • 税金リテラシー: 富裕層は税制に非常に詳しい。所得税(最大55%)に対し、株式投資の分離課税(約20%)や不動産投資の法人活用など、税率の違いを理解し、賢く対処する。

  • 「今すぐ始める」意識: 「お金が貯まったら始めよう」ではなく、「お金を増やすために今すぐ少額から始める」ことが、経験値を積み、将来の大きな利益につながる。

  • 失敗からの学び: 失敗を省み、次の計画を立てて行動することを繰り返すことが、成功への近道である。

 

第6章:富裕層のポートフォリオ戦略

 

  • 投資の基本: 「長期投資」と「分散投資」が基本セオリー。「短期・1点集中」は避けるべき。

  • 多様な分散先: 富裕層は国内株式、米国株式、未上場株、不動産、太陽光、為替、暗号資産など、国内外の様々な資産に分散投資している。資産の割合は、日本:米国:新興国=30%:50%:20%が一つの目安。

  • 両利きの投資: 「成長(グロース)投資」と「割安(バリュー)投資」のどちらか一方ではなく、両方の視点を持って投資機会を探す。

  • 個人投資家の優位性: プロのファンドは運用規模が大きすぎて、時価総額の小さい有望な企業に投資しにくいという制約がある。個人投資家は、こうした銘柄に投資できる優位性を持つ。

 

第7章:お金の流れを読む力と金融リテラシー

 

  • お金の流れを読む: 株価が上がった際、それが市場全体の流れによるものか、その企業固有の要因によるものかを見極めることが重要。

  • 世界のニュースへの感度: 戦争、政治、テクノロジーの進化など、社会に大きな影響を与えるイベントが起きた際には、自身の投資ポートフォリオを見直すことが不可欠。

  • 市場の歪みを見つける: 国の制度変更(例:固定価格買取制度)などに伴う市場の歪みは、大きな投資チャンスとなり得る。

  • 現代の「読み・書き・そろばん」: 現代社会で必須のスキルは「金融リテラシー・英語・プログラミング」である。

  • レバレッジ思考: 富裕層は自分の時間を最も重要な資産と考え、アウトソースなどを活用して時間を捻出する(レバレッジをかける)。その時間を、より生産性の高い活動に再投資する。

  • ビジネスモデルの理解: 「これは誰が儲けているビジネスモデルなのか?」を常に考える習慣を持つことで、不当にお金を搾取されることを防ぎ、「抜かれない人」になる。

 

第8章:不動産投資の要諦

 

  • 投資対象の見極め: 節税目的だけでなく、不動産投資そのもので長期的に利益が出る物件を選ぶ。表面的な利回りや家賃保証に惑わされない。

  • 富裕層の物件選び:

    • 築年数より「メジャーなエリアで駅から徒歩5分圏内」という立地を重視する。

    • 人口や乗降客数が安定・増加しているなど、長期的な需要が見込めるエリアを選ぶ。

    • 自分自身に土地勘があり、その街の雰囲気を理解しているエリアを優先する。

  • 交渉力の重要性: 金融リテラシーは「目利き力」だけでなく「交渉力」も高める。スピーディな意思決定や自己資金での決済などを武器に、有利な条件を引き出すことができる。

  • 法改正へのアンテナ: マンション法改正などのニュースに常にアンテナを張り、自身の投資への影響を考える。

  • 分譲か賃貸か: 「分譲か賃貸か」という二元論ではなく、「物件次第」で決める。自分が住みたいと思った家が分譲なら買い、賃貸なら借りるという柔軟な思考を持つ。

 

第9章:お金との賢い付き合い方

 

  • 投資と消費の線引き: お金を使う際に、それが将来のリターンを生む「投資」なのか、単なる「消費」なのかを常に意識する。自己成長や人脈形成につながる出費は投資と考える。

  • ROI(投資対効果)の意識: 時間やお金を使う際に、それに見合うリターンがあるかを考える。ポイ活やマイル修行など、時間対効果の低い活動には手を出さない。

  • フェアバリューの哲学: 全てのモノには適正価格があるという考え方を持ち、不当に搾取されることを嫌う。価格のつき方が不透明なものにはお金を払わない。将来価値を現在価値に割り引いてフェアバリューを算出する思考(DCF法)は投資の基本である。

  • 認知バイアスへの警戒: 「アンカリング」や「バンドワゴン効果」といった認知バイアスの存在を理解し、その罠に陥らないよう意識する。特に「知らない人からの投資話」には乗らないというルールを徹底する。

 

第10章:最強の武器「習慣化」

 

  • 習慣化の絶大な力: 何か一つのことを「習慣化」できる力は一生の武器になる。富裕層は、この力で自己を律し、成功を掴んでいる。

  • 実行の重要性: 「お金が貯まったら」「時間に余裕ができたら」と先延ばしにすることは、実行しないことと同義。

  • 習慣化の仕組み作り:

    1. 予定のブロック: やると決めたら、まずカレンダーに予定を書き込み、絶対に動かさない。

    2. 言い訳の排除: 行動できない理由がない状況をあらかじめ整えておく(例:寝る前に運動着を用意する)。

    3. 記録とコミュニティ: 毎日の達成を記録し、同じ目標を持つコミュニティに属することでモチベーションを維持する。

  • 時間の捻出法:

    • 時間の可視化: 1週間の時間の使い方を書き出し、無駄な時間を特定する。

    • 優先順位の見直し: 「緊急性は高いが重要性は低い」タスク(錯覚の領域)に費やす時間を削る。

    • 環境を変える: 職住近接の場所に引っ越す、付き合いを線引きするなど、物理的に時間を生み出す。

  • 早朝活動のメリット: 誰にも邪魔されない早朝の時間は、運動や学習に最適。心身がリフレッシュされ、1日の生産性が劇的に向上する。

 

第11章:人生を豊かにする健康と人間関係

 

  • FIREへの警鐘: 完全なリタイアは社会との繋がりを断ち、インフレや予期せぬ支出で資産が目減りするリスクがある。働くペースをコントロールしつつ、好きなことで収入を得て社会と繋がり続けることが望ましい。

  • 学び続ける姿勢: 富裕層は学習を決してやめない。異なる分野の知識を融合させることで新たなアイデアを生み出す「メディチ・エフェクト」を実践している。

  • 効率的な学習法:

    1. ネットで広く浅く全体像を掴む。

    2. 関連書籍を2〜3冊読む(極端な主張のものも含む)。

    3. 専門家や実践者にヒアリングし、理論と現実の差を学ぶ。

  • 勝ち癖をつける: 日常生活にマイルールを設け、それを守ることで小さな達成感を積み重ね、「勝ち癖」を身につける。

  • スキルの掛け算: 複数の分野でセミプロレベル(1,000時間程度)のスキルを身につけることで、圧倒的に希少価値の高い人材になる(例:金融×プログラミング)。

  • 健康の優先順位: 富裕層は「カネ→カラダ→ココロ」の順番で人生を整える。まず運動・睡眠・食事で体を整えることが、心の安定と経済的な成功の土台となる。

  • 人間関係の分散投資: 会社、趣味、地域活動など、所属するコミュニティを複数持つことで、精神的な安定を得やすくなる。

  • 信頼される人の仕事術: メール返信の速さ、権限移譲、フェアな評価、相手の立場を理解したコミュニケーションなどを実践し、信頼を積み重ねる。

  • 付き合うべきでない人: 約束を守らない、嘘をつく、愚痴や批判が多いなど、時間とエネルギーを奪うだけの人とは付き合いをやめる。

  • 人脈構築の作法: 人を紹介してもらう際は、相手を徹底的に調べ、相手のメリットになる提案を用意し、紹介者と相手の両方に複数回お礼をするなど、最大限の敬意を払う。人脈をお金儲けのために安易に「売る」のではなく、より大きな価値を生むために「活かす」ことが重要である。

     

     

●私の財産告白 を読んで

 

 

書評

 

本書は、単なる蓄財術を説いた本ではない。著名な林学博士であり、「公園の父」としても知られる本多静六氏が、自らの壮大な人生計画をいかにして実現したかを赤裸々に語る、実践的な人生哲学の書である。その核となるのが、かの有名な「四分の一天引き貯金法」だ。収入の四分の一を強制的に貯蓄し、残りで生活するというシンプルかつ苛烈なルールを自らに課し、若くして経済的独立の礎を築いた。

しかし、本書の真価は、その先にある。貯蓄で得た資金を元手に、株式や山林へといかに「投機」ではなく「投資」を行ったか。そして、巨万の富を築いた後、それを「仕事の道楽の粕」と捉え、いかに社会や子孫のために手放していったか。その潔い生き様は、金銭との健全な向き合い方を我々に教えてくれる。

「人生即努力、努力即幸福」。この最終結論に至るまでの著者の思索と実践の軌跡は、時代を超えて読む者の胸を打つ。経済的な成功のみならず、人間関係、仕事との向き合い方、そして真の幸福とは何かを問い直すきっかけを与えてくれる、すべての現代人必読の一冊である。


 

本書の要約

 


 

第1部:財産形成の哲学と実践

 

 

1. 人生計画と目標設定

 

  • 著者は若き日に壮大な人生計画を立てた。

    • 四十歳まで: 勤倹貯蓄に励み、生活安定の基礎を築く。

    • 六十歳まで: 専心勉学に励む。

    • 七十歳まで: 社会への「お礼奉公」に努める。

    • 七十歳以降: 風光明媚な温泉郷晴耕雨読の生活を送る。

  • この計画と共に、「毎日一頁以上の文章執筆」と「月給四分の一天引き貯金」という二つの「行」を始めた。

  • 計画通り、四十歳で貯金の利子が本俸(給料)を超え、「万巻の書を読み、万里の道を往く」という念願の実行に移った。

 

2. 本多式「四分の一天引き貯金法」

 

  • 基本原則: 収入があった瞬間、有無を言わさずその四分の一を天引きして貯金する。そして、残りの四分の三で生活を成り立たせる。

    • 計算式: 貯金 = 通常収入 × 1/4 + 臨時収入 × 10/10

    • 臨時収入はすべて貯金に回し、通常収入を増やすための元手とする。

  • 精神論:

    • 貯金成功の鍵は、方法論ではなく「実行する意志」にある。

    • 最初の生活は「お話にならぬ苦しさ」であったが、この方法は現代でも経済的行き詰まりを打開する力があると確信している。

    • 何事も最初が肝心であり、最初から生活レベルを切り下げて始めるのが最も効果的である。

    • 貯金の最大の障害は「虚栄心」である。見栄を捨てれば、誰にでも実践可能である。

  • 実践の重要性:

    • 口先だけで人に勧めるのではなく、自ら実践して効果を示してこそ、人はついてくる。

    • 家計簿をつけることが、貯金生活の第一歩である。

 

3. アルバイト(副業)のすすめ

 

  • 単なる節約という消極策だけでなく、本業に支障がなく、むしろ本業の足しになるようなアルバイト(副業)に励むべきである。

  • 著者自身は、「一日に一頁の文章執筆」という「行」をアルバイトとして始め、それが収入につながった。

  • 「貯金とアルバイト」で、雪だるまの芯を作ることが重要である。


 

第2部:投資による資産拡大

 

 

1. 投資の基本哲学

 

  • 貯金から投資へ: 勤倹貯蓄である程度の資金ができたら、それを有利な事業に「投資」することが重要。貯金をそのままにしておいては、その増加には限界がある。

  • 投機との区別: あくまでも堅実な「投資」でなければならず、「投機」や「思惑」であってはならない。

  • 時節を待つ: 投資成功の秘訣は「時節を待つ」こと。焦らず、怠らず、好機が来るのを待つ。

    • 景気循環の活用: 好景気・楽観時代には勤倹貯蓄に励み(金を重んじる)、不景気・悲観時代には思い切った投資を行う(物を重んじる)。

  • 危険の分散: 投資先を複数に分けることで、リスクを分散させることが賢明である。全体としてプラスになれば良いと考える。

 

2. 具体的な投資手法

 

  • 株式投資:

    • 基本戦略: 「二割利食い、十割益半分手放し」

      • 二割利食い: 株価が買値の二割上がったら、そこで売却して利益を確定する。その利益は元本に加え、銀行の定期預金に戻す。

      • 十割益半分手放し: 長期保有した株が二倍以上に値上がりした場合、まず持ち株の半分を売却して投下資本を回収する。これにより、残りの株は実質的に無料で手に入れたことになり、精神的に余裕をもって保有し続けられる。

    • 銘柄選定: 当初は将来性のある鉄道株から始め、その後は瓦斯、電気、製紙、銀行など30以上の業種に分散投資し、リスク管理を徹底した。

    • 成功例: 関東大震災直後、暴落した東京電燈株を「必ず元に戻る」と確信して買い、大きな利益を得た。

  • 山林・土地投資:

    • 着眼点: ドイツのブレンタノ博士の教えに基づき、当時は交通の便が悪く価値が低いとされていた土地や山林に投資した。世の中の進歩と共にインフラが整備されれば、価値が上がると見越していた。

    • 成功例: 秩父の奥地にある山林を、一町歩(約1ヘクタール)あたり4円前後という破格の値段で買い入れた。当時は売り手も困っていたほどの土地だったが、後に自動車道などが整備され、莫大な価値を持つに至った。

    • 意義: 山林事業は、単なる投資対象としてだけでなく、国土愛護の観点からも極めて重要である。


 

第3部:財産の意味と使い方

 

 

1. 財産との向き合い方

 

  • 財産は「仕事の粕」: 財産は、職業に精励した結果として自然に溜まった「仕事の粕(かす)」に過ぎない。

  • 金の限界: 金には限度があり、それを超えると幸福の源泉ではなく、不幸の源泉となり得る。

  • 金と品性: 「金を持つ者は品性下劣だ」という考え方は、封建時代の古い思想の悪影響である。

  • 使う難しさ: 金を作ることも難しいが、それ以上に有意義に使うことはさらに難しい。

 

2. 子孫への相続に対する考え方

 

  • 美田を買わず: 子孫のために財産を残すことは、かえって彼らを不幸に陥れる可能性があると悟った。「児孫のために美田を買わず」という西郷南洲の言葉に倣い、財産相続を重視しないことを決意した。

  • 残すべきもの:

    • 財産よりも大切なのは、一生涯絶えることのない精進向上の気概努力奮闘の精神である。

    • 子孫を本当に幸福にするには、彼らが自ら努力できるような教育を施し、努力が必要な環境に置くことが最善である。

  • 幸福の自得: 幸福は、各自が自身の努力と修養によって勝ち取るものであり、親が財産を与えて達成できるものではない。

 

3. 社会への奉仕

 

  • 財産の社会還元: 最小限の財産を残し、他はすべて学校、教育、公益財団などへ寄付した。

  • 「四分の一奉仕」: 財産形成に成功した人々には、「四分の一貯金」の精神を発展させ、利益の「四分の一を社会奉仕」に充てることを勧めている。

  • 成功者の責務: ある程度の成功を収めた者は、自分だけでなく他人をも成功させるために余力を割く社会的責務がある。


 

第4部:人間関係と処世術

 

 

1. 金銭の貸し借りと保証

 

  • 貸借の禁止: 「貸主は金と友人とを同時に失う」。金の貸し借りは、いかなる場合でも厳に慎むべきである。

    • 頼まれた場合は、返済を期待せず、熨斗をつけて「進呈」する覚悟で渡すべきである。証文を取ってはいけない。

    • 本当に信用のある人には、銀行など然るべき供給先がある。親類知人に借りに来る時点で、その人物には問題があると考えるべきである。

  • 保証人の禁止: 金融上の保証人になることは、絶対に避けるべきである。

 

2. 人を動かす極意

 

  • 基本姿勢:

    • 誠心誠意: 対人関係の基本は、お互いの誠心誠意である。

    • 責任と一任: 上長は「責任は自分が負う」という姿勢で、仕事は部下に一任し、思う存分やらせるべきである。

    • 長所を褒める: 人の長所を見つけて褒めることに努める。「長所と交われば悪友なし」。欠点の指摘は添え物程度にする。

    • 名前を覚える: 人の名前を正しく覚えることは、相手の心をつかむ上で極めて重要である。

  • 具体的なテクニック:

    • 知らぬ顔の半兵衛: 時には「知らぬ顔」をすることが最良の解決策になる。しかし、裏では全てを把握しており、部下に「オヤジは全てお見通しだ」と思わせることで、その効果が倍増する。

    • 少し上の仕事を与える: 部下の力量より少し上の仕事を与えることで、誇りと責任感を持たせ、成長を促す。

    • 意見を虚心に聴く: 部下の意見がつまらないと感じても、まずは虚心坦懐に最後まで聴く雅量を持つべきである。

    • 叱り方の作法: 「三つ褒めて一つ叱る」。賞賛は春の雨、叱責は秋の霜。叱る際は、一度に多くの欠点を指摘せず、一つの事柄に絞り、将来に向けた改善案として伝える。

    • 約束の厳守: 部下との些細な約束でも忘れずに実行する。そのために手帳にメモを取るなどの工夫が有効。

 

3. 会議や議論の進め方

 

  • 後出しの原則: 重要な会議ほど、まず人の意見を十分に聞き、他説を立てつつ自説を補足する形で穏やかに持ち出す。

  • 共同責任: 目的の結論に到達できれば良いのだから、他人の意見に花を持たせることで、結論に対する共同責任の意識を皆に持たせる。

  • 潔い撤退: 議論の中で自説の誤りに気づいたら、潔く降参し改める。その方がかえって評価が上がる。


 

第5部:人生の幸福論と成功哲学

 

 

1. 幸福の本質

 

  • 幸福は「上り坂」にある: 人生の幸福は、生活水準そのものよりも、その生活が「上り坂」か「下り坂」かという方向性によって決まる。

  • 職業の道楽化: 人生の最大の幸福は「職業の道楽化」にある。日々の仕事が面白くてたまらないという境地に達すること。

    • その方法はただ一つ、勉強と努力を重ねることである。

    • 単調な仕事でも工夫次第で面白くできる(精米作業中に読書をした著者の体験)。

  • 人生即努力、努力即幸福: これが著者の体験社会学の最終結論である。

 

2. 凡人が天才に勝つ方法

 

  • 天才とは努力なり: ゲーテの言葉を引用し、天才の本質は努力にあると説く。

  • 「凡才プラス努力」は「天才マイナス努力」に勝つ: 天才が怠けている間も努力を続けることで、凡才は天才を追い越すことができる。

  • 仕事を追う: 仕事に追われるのではなく、「仕事を追う」姿勢が重要。明日の仕事を今日やるくらいの心構えで、常に先回りして準備する。

 

3. 失敗との向き合い方

 

  • 失敗は必須科目: 失敗は成功の母であり、「社会大学における必須科目」である。失敗したことがないというのは、むしろ誇るべきことではない。

  • 失敗からの学び: 失敗は自分の未熟さの表れと捉え、それを「生きた学問の月謝」として次の仕事に活かすことが重要である。

  • 妄執を捨てる: 失敗にいつまでも執着せず、綺麗に忘れる努力をし、次の仕事に集中すべきである。

 

4. 儲けの本質と社会貢献

 

  • 相身互いの精神: 儲けは独り占めするべきではない。「徳は孤ならず、必ず隣有り」。人に儲けさせてこそ、自分も自然に儲かる。

  • 儲けの多面性: 金銭的な儲けだけでなく、道徳上、教養上、生活上、社会奉仕上でもプラスになることが真の「儲け」である。

  • 本業第一: 平凡人は、一つのことに全力を集中すべきである。有志的活動や政治活動は、あくまで本業で成功を収めた後の「余暇、余徳の社会奉仕」として行うべきである。