市場は「大口投資家」に操作されている――。この衝撃的な前提から始まる本書は、価格チャートの裏に隠されたインサイダー(専門家)の動向を「出来高」から読み解く「VPA(出来高・価格分析)」の完全ガイドです。なぜ価格が動いたのか、その動きは本物か、それともワナか。VPAの「努力と結果の法則」を学ぶことで、彼らの「買い集め」や「売り抜け」の痕跡を追跡できます。トレードはアートであり、本書はその解像度を劇的に上げる「筆」となるでしょう。本気で市場を理解したいトレーダー必読の書です。
VPA(出来高・価格分析)の要点まとめ
VPAの基本原則と市場の性質
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市場操作の前提: 市場は「大口投資家」(インサイダー、スペシャリスト、マーケットメーカー)によって操作されている。彼らは一般大衆の「恐怖」と「貪欲」という感情を巧みに利用する。
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歴史は繰り返す: 投機は古くから存在し、今の市場で起こることは過去にも未来にも起こる。
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VPAとは: Volume Price Analysis(出来高・価格分析)の略。値動きを判断する上で、価格と出来高は主要な要素である。
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価格と出来高の関係: プライスアクション(価格)には全ての情報が内包されているが、出来高がなければその価格分析を裏付けるものがない。出来高を伴う価格の動きは「本物の動き」であり、トレンドの始まりを示唆する。
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フラクタル構造: VPAの原則は、30分のスイング予測でも数週間のトレンド予測でも同じように機能する。1滴の水(短期足)も大海(長期足)も同じ要素でできている。
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トレードの本質: トレードは科学ではなくアートである。近道はなく、継続的な学習と努力がテクニックを上達させる。
市場操作のサイクル:「買い集め」と「売り抜け」
インサイダー(スペシャリスト)は「卸売価格で仕入れ、小売価格で売る商人」である。
1. アキュミュレーション(買い集め)
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インサイダーが株を買い集める(卸売価格で仕入れる)段階。
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彼らはメディアを使い、「悪いニュース」を流して一般大衆を怖がらせ、価格を下落させて「ふるい落とし」、大衆に株を売らせる。
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「ダマシの下落」を数回発生させ、最後まで持ち続けた保有者をもあきらめさせる。
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この買い集めは、数日、数週間、場合によっては数カ月かかる。
2. ディストリビューション(売り抜け)
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インサイダーが買い集めた在庫を売る(小売価格で売る)段階。
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彼らはメディアを使い、「良いニュース」を流して一般大衆の関心を引きつけ、価格を劇的に上昇させ、高値で大衆に売りつける。
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一般大衆が「悲観的」なときに買い、「楽観的」になったら売るのが鉄則である。
3. 試し(Testing)
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アキュミュレーション(買い集め)が終わった後、インサイダーは価格を吊り上げる前に「試し」を行う。
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供給の試し: 価格を一時的に下落させ、反応を見る。
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需要の試し: ディストリビューション(売り抜け)が終わった後、価格を一時的に上昇させ、反応を見る。
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成功: 出来高が少なければ、買い需要がすべて吸収された(買い手がいない)ことを意味し、価格急落の準備が整う。
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4. クライマックス(Climax)
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売りのクライマックス (Selling Climax): ディストリビューションの終わりに発生。大衆がパニック売りをし、インサイダーがそれを吸収する。
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買いのクライマックス (Buying Climax): アキュミュレーションの後の上昇トレンドの天井で発生。大衆が熱狂して買い、インサイダーがそれを売り抜ける。
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ストッピングボリューム (Stopping Volume): 急落後、インサイダーが大量の買いを入れて下落を止めること。極端に多い出来高を伴うが、価格は下がらない(実体が小さい)。トレンド反転(上昇)の強力なシグナル。
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トッピングアウトボリューム (Topping Out Volume): 上昇トレンドの天井で発生する逆の現象。反転(下落)のシグナル。
VPAの核:「努力と結果の法則」
ワイコフの第三法則:「結果(値動き)は努力(出来高)の量と一致しなければならない」。価格が妥当か「例外」かを見極める。
妥当な値動き(トレンド継続)
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上昇トレンド: 価格上昇 + 出来高増加 = 本物の上昇。インサイダーが参加している。
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下降トレンド: 価格下落 + 出来高増加 = 本物の下落。
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ローソク足での確認: 実体が大きくヒゲのないローソク足(長大線)が、多い出来高を伴う場合、その方向への強いセンチメントが裏付けられる。
例外的な値動き(ワナまたは反転シグナル)
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例外1: 高い努力 + 小さな結果
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例外2: 小さな努力 + 大きな結果
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現象: 出来高が少ない(または平均以下)のに、値動きが大きい(長大線)。
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解釈: ワナを示す警告。インサイダーが市場センチメントを「探っている」か、ダマシの動きである。
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例外3: トレンドと出来高の不一致
VPAとローソク足分析
ローソク足の形状(ヒゲや実体)と、それが示す出来高の関係性を分析する。
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流れ星 (Shooting Star): 上ヒゲが長く実体が小さい足。
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ハンマー (Hammer): 下ヒゲが長く実体が小さい足。
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意味: 市場の強さを示す。「市場が底を打つ」の意。インサイダーによる「強制された買い」を示す。
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VPA: 極端に多い出来高を伴うハンマーは、買いのクライマックスの一環であり、反転の可能性が高い。
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首吊り線 (Hanging Man): 上昇トレンドの天井で出現するハンマー。
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意味: 市場の弱さを示す早期のサイン。
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VPA: この後に出来高の多い「流れ星」が出現すると、弱気のシグナルとして強力に裏付けられる。
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短小線 (Small-Body Candle): 弱い市場センチメントを示す。出来高が「多い」のに短小線(例外)の場合、市場は小休止か反転の準備をしている。
支持線・抵抗線と保ち合い
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保ち合い (Consolidation): 市場の約70%は横ばい(保ち合い)である。これはアキュミュレーションやディストリビューションの期間に発生する。
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原因と結果の法則: 保ち合いの期間が「長い」(原因)ほど、そこからブレイクアウトした後の値動き(結果)は大きくなる。
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領域の特定: 「ピボットハイ」(孤立した高値)と「ピボットロー」(孤立した安値)を使って、保ち合い領域の天井(抵抗線)と床(支持線)を特定する。
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ブレイクアウトの確認:
トレードの実践と応用
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忍耐の重要性: シグナル(例:流れ星)が現れても、市場はすぐには反転しない。インサイダーが買いや売りを「吸収」するには時間がかかる。
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複数の時間枠 (Multi-Timeframe Analysis): VPAは複数の時間枠で使うとパワーを増す。
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3つの時間枠(例:5分足、15分足、30分足)を推奨。
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長期足(30分足): 「支配的なトレンド」を把握する。
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中期足(15分足): トレードの仕掛け(エントリー)に使う。
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短期足(5分足): 市場を細かく見る。
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トレンドの変化は短期足から長期足へと伝播する。
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支配的トレンドに逆らったトレードはリスクが高く、短期間にすべき。
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FX市場での出来高:
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ポジション管理: 仕掛けるのは簡単だが、手仕舞うのは非常に難しい。VPAは、トレンドが本物か(出来高が減少する押し目かなど)を判断し、ポジションを自信を持って保持するのを助ける。
高度なVPAツール
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VAP (Volume at Price): 「どの価格帯で」どれだけの出来高が取引されたかを示す水平ヒストグラム。出来高が集中している価格帯、つまり強力な支持線・抵抗線を視覚化するのに役立ち、VPAを補強する。
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ティックチャート: 時間ベース(例:5分足)ではなく、取引回数ベース(例:80ティック)でローソク足を生成する。
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エクイボリューム: 時間軸の代わりに出来高をX軸(ローソク足の「幅」)で表すチャート。出来高の多いブレイクアウトは「パワーボックス」(幅が広く背が高い箱)として現れる。
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デルタボリューム: 「買い気配(Ask)」で売買された量と「売り気配(Bid)」で売買された量の出来高の差。純粋な買い圧力と売り圧力を示す。
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その他の操作: ダークプール(市場の透明性を損なう取引所外取引)や、HFT(高頻度取引)による戦略(アービトラージ、モメンタム・イグニッションなど)が存在する。
